Chu☆『巫女みこナース・愛のテーマ』(『巫女みこナース』)

成年向けの美少女PCゲーム(エロゲー)の主題歌として公開されるや、その余りにも特異な音楽性がPCユーザーにバカ受けし、ネット上で爆発的人気を誇ったのがこの『巫女みこナース・愛のテーマ』です。

まだYoutubeもニコニコ動画も開局されていなかった当時、FLASHによるネタ動画という形でその破壊的な音楽性は伝搬され、息の長いヒット曲に。遂には、株式会社ドワンゴが運営する着メロサイトのCMソングとして、テレビ放映までされました。

「電波ソングとは何か?」その問いに対する答えは、この曲に集約されているといっても過言ではないでしょう。

異常にポップでキャッチーなメロディ、過剰なまでの萌え系のアニメ声による歌、イマイチ意味が判然としない常識破りな歌詞、そして、早口でまくし立てる独特な歌唱法……と、その後、ポップ・ミュージックの世界で耳にすることができようになった「電波ソング」的な音楽を構成する各要素……電波なエッセンスが、この『巫女みこナース』には全て詰まっています。

KOTOKO『さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~』(『カラフルキッス ~12コの胸キュン!~』)

こちらも『巫女みこナース』と同じく2003年リリースなエロゲー発の有名曲。「I've」制作の楽曲で、そのポップで享楽的な音楽的側面を濃縮したナンバーです。

"萌え"や"可愛い"という概念を過剰なまでに歌とメロディに叩きつけ、リスナーに全力投球してくる、その潔い姿勢と思い切りの良さこそが、この曲の最大の魅力でしょう。

アニソンや声優ソング、アイドルソングが電波ソングのエッセンスを取り込み、その音楽的方法論が一般化した今では普通に聴くことができる曲かもしれませんが、当時、この濃厚な"萌え"は圧倒的な快楽と同時に、頭の中が「カーッ!」と熱くなってくるような気恥ずかしさとも表裏一体であり、あらゆる意味で過激かつ先鋭的な一曲でした。

I'veやKOTOKOさんは、後に、テレビアニメの世界にも進出。その後の活躍は、アニソンファンならば言わずもがなでしょう。

UNDER17『天罰! エンジェルラビィ』(『まじかるトワラー・エンジェルラビィ☆傑作選』)

「UNDER17」は、シンガー、作曲家、作詞家、声優……と、マルチな活動を行うクリエイターの桃井はるこさんと、ギタリストの小池雅也さんを中心とした音楽制作ユニットです。

2000年代に、成人向けPCゲームの主題歌を数多く手掛けるのですが、その個性的な楽曲の数々の魅力は、エロゲーファンだけでなく、一般のアニメファンや声優ファンにも飛び火。結果的に、エロゲソングの知名度を高めると共に、活動の後期には、テレビアニメの主題歌を担当するなど「萌えソング」の間口を広げた立役者です。

2000年代は、エロゲーから飛び出したミュージシャンやシンガーがアニソンの世界で続々とデビューを果たし、その斬新な音楽性でシーンを大いに活性化させるという光景が数多く見られました。

それまでどことなくアンダーグラウンドなイメージがあったエロゲーから登場したクリエイターが活動の幅を広げ、アニソンや声優ソングの世界で大活躍する様は、とにかく刺激的で痛快に感じられたものです。

『天罰! エンジェルラビィ』は、そんなUNDER17の代表曲の一つ。「フゥ! フゥ!」というフレーズが印象的な超キャッチーな歌と、裏打ちによるリズムがとにかくカッコ良い曲です。

ユニット解散後、桃井さんと小池さんは、それぞれコンポーザーやプロデューサーとしても後続のアニソンや声優ソング、あるいはアイドルソングに関わり、大きな影響を与え続けています。電波ソングや萌えソングと呼ばれる音楽において、最大級の貢献を果たした名ユニット、それがUNDER17なのです。