子どもって毎日、毎晩「これ読んで」と同じ絵本を持ってきませんか?子どもは喜んでいても、読み手の自分は同じ話を何回もしなくてはならないので、ちょっとうんざりしてしまいます。
『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』の著者の立石美津子がお話します。
子どもは繰り返しが好き
大人って繰り返しが基本嫌いです。少なくとも私は嫌いです。同じ話を何回も聞かされると「それ前に聞いた話だけれど…」とうんざりしてしまいます。
本も試験勉強で必要に迫られる、資料を作るために参考にしなくてはならない等の特別な理由がなければ、買った本で何度も読み返すことはしません。
ところが、大人と正反対で子どもは繰り返しを好みます。赤ちゃんに「いないいないばあっ!」をすると、同じことをしても喜びます。次にどんな顔が出てくるかわかっているのに、また笑います。
伝い歩きを始めた赤ちゃんは、転んでも、倒れそうになりながらも、何度も、何度も立ち上がり歩こうと果敢に挑戦します。
「次に出てくる顔はわかっているから、いないいないばあは一回でいいよ」とか「もう、繰り返すのは飽きた。歩く練習は止めよう」という赤ちゃんはいませんね。
繰り返しがある絵本
絵本も同じです。お気に入りの絵本があると毎日のように「これ読んで」と持ってきます。更に読み終えた途端に「もう一回読んで!」とせがんできます。ページを送りしたり、いい加減に省略すると不満そうな顔をします。
次にどんな場面が出てきて、どんな言葉が出てくるかわかっているのに真剣に聞いています。
よく観察してみると笑ったり、怖がったり、驚いたりする準備をしている表情をしているようにも見えます。そして毎晩、同じ反応をします。
反復が嫌いな大人と反復したい子どもの正反対の気持ちがぶつかり合いになり、つい大人は「またそれ、今日は違う絵本にしたら」と言いたくなります。
桃太郎の省略
子どもが好む有名な昔話はたいてい繰り返しが多いです。たとえば桃太郎はこんな感じです。
桃太郎が歩いていると、犬が出てきて言いました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬を連れて鬼が島へと向かいました――
桃太郎が犬を連れて歩いていると猿が出てきて言いました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬と猿を連れて鬼が島へと向かいました――
そこに一羽のキジが飛んできました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
登場する動物だけが変わるだけで文章はどのページも全く同じです。だからめんどくさくなって「キジはさっきの犬や猿と同じことを言いました……」と読み聞かせたりします。すると子どもは「ちゃんと読んで!」と怒ります。