自己受容とは、できない自分でも受け入れてあげること

――子どもはありのままで受け入れてもらえて、自然と親から認められていることを感じられそうです。では具体的に、自己受容とはどのようにやればいいんでしょうか?

福田:自己受容できていない方は、脳の中にめぐっている言葉が否定的なはずなんですね。「なんでこんなことやっちゃったんだろう」とか、自分がやったことや言った言葉、自分の存在、感情に対して。

自分に対する言葉が攻撃的だったり、いじわるだったり、優しくなかったりすると、それがずっと頭の中に残っているわけです。繰り返しそれを考えてしまうんですね。

その頭の中にあるままの言葉でもいいので、いったん吐き出してみてください。「なんで~なんだろう」とか、口にしてみる。

そのあと、「でも私なりに一生懸命やったもんね」とか「仕方なかったもんね」とか、自分自身を認めてあげる言葉も言ってください。

――それは、書くのでもいいですか?

福田:もちろんです。ただ、つぶやくほうが簡単ですね。言わないでおいたことを、外に出してあげるだけで癒されるんですよ。

はじめは、言えなかった言葉っていうのが心に溜まっているので、言っても言ってもラクにならない感じがすると思うんですけど、だんだんラクになってきて“圧抜き”ができるようになります。それをすることで、「今、自分がどう感じたのか」という感情が自分でわかるようになってくる。

頭の中でモヤモヤしてる段階ではわからない、ぼんやりと「ヤダ」っていう感じを言語化できるだけでもかなりいいと思います。

――何がイヤだと思ったのか、なんで自分はこう思ったのか、などでしょうか。

福田:そうです。自分に対していじわるになっている言葉をちゃんと外に出して、いじわるじゃない言葉に直すこと。自分に優しく言ってあげることです。そういう自分であることを受け入れてあげる、という感じですね。

こうできなかった、ああできなかったってつい思いがちですけど、できない自分を受け入れていくしかないんだな、と。

――自分を励ましてくれるもうひとりの自分がいるイメージですかね。

福田:私たちって、「人に言ってほしい」って思うんですが、人はコントロールできないんですよね。自分で自分を認めてあげるほうがラクになれます。

――自分で言うことで、他人から言われたような承認欲求を得られるものですか?

福田:どちらかというと、自分で言ったほうがいいと思います。

他人に言われることって実はあんまり効果がなくて、誰に言われたいかっていうと根っこは絶対お父さん・お母さんなんですよ。でも両親も人なので、期待するのは難しい場合も多いですよね。自分でやるほうが、落ち着いてくると思います。

私たちって、心の中で自分に対して声をかけている時間が一番長いんですね。なので、そこを優しくしてあげれば、子どもやパートナーに対しても、優しい言葉の使い方ができます。

脳って不器用で、同じ使い方しか基本的にはできないんです。自分にダメ出しをしている状態だと、脳がエンストしている状態。

日本人って、ついつい自分のできないところをお尻を叩いてまでやるみたいなところがあると思うのですが、そうではなくて自分を優しく励ましながらやっていくといいと思います。 

――そういう優秀なコーチみたいな人を自分の中に作ったらいいんですね。つい、傷つかないように最悪の事態を先に考えて予防線を張って、できなかったら「やっぱりね」と、自分は失敗して当たり前みたいな考えが染みついてしまっているかもしれません…。

福田:何かするときに、自分はダメだって思いたいような目標設定をするんですよね。私たちって、“思い込みの証拠集め”をしているので。

「私はダメな人」っていう思い込みを持っていたら、絶対に達成できなさそうな目標を作って、「私はやっぱりできない人」っていう思い込みを刷り込んでいく。

――それで安心してるところがありますよね。

福田:考え方の癖ですね。できない自分だっていうのを自己受容できていれば、例えばダイエットをやるにしても、目標設定も低くなるはずなんですよ。

それに、失敗を悪いことだと思っているから、失敗しないようにとか、失敗しちゃダメだって思うんですよね。失敗は情報であって、こうしたらこうなるっていう結果なので、悪いことではないんです。

小さい頃に「これは失敗なんだ」って認識したのって、大人の表情とか言葉なんですよ。

例えば赤ちゃんは牛乳パックを倒しても「失敗しちゃった!」って思わないんですよね。でもそれを見た親が「何やってるの! ダメでしょ!」って言うから、「これって悪いことなんだ!」って学習するんです。

失敗がダメなことだと思わないようになると、子どもの失敗というか“失敗に見えること”も、失敗だと思わなくなり、それで学ぶことができるよね、新たな視点が見つかるよね、と思えるようになります。そこも脳の使い方なんです。