ナレーションは「猫に話しかけているような感じで」
そして、この『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』では、よりソフトな声で作品の中に流れるゆったりとした空気を引き立てている。
「ナレーションの声は、ほとんどいつもの僕のまんまです。観ている人を作品の世界にいざなうとか、情報を正確に伝えるとか、考えることはもちろんありますけど、ほとんど何もしていないです。普段から野良猫を見かけると『何してるの?』って話しかけるタイプなので。普段猫に話しかけているような感じでナレーションも読ませてもらいました」
北海道の牧場と、ミャンマーのインレー湖。2つの町を舞台に、猫の日常が描かれる。
中でも特に印象的なのが、「猫たちはみんな自分なりの生き方を自分で決めていました。無理はせず、だけど精一杯まっすぐに自分の道を歩きます」という、監督・撮影の岩合光昭自らによる語りだ。
誰かのようにならなくていい。自分は自分のままでいい。そんなメッセージが、比較とマウントの渦巻く現代社会で生きる私たちを温かく包み込む。
「自分らしく、というのは決してワガママということではなく、自分を受け入れるということ。誰かや何かと比べて自分が劣っているとか優れているとか模範的だとか貢献しているとか、そういうことじゃなく、シンプルに生きればいいってことだと思うんですよね。
今のような情報社会は何でも簡単に比較できるようになって。もちろん便利なこともあるけれど、ずっと比べ合いの中にいると心が疲れてしまう。だからこそ、相対的じゃない、絶対的な指針を持って生きるべきだと僕も思います」