超特急が存在するからこそ松尾太陽がある

松尾太陽

――太陽さんの歌は、聴くと温かい気持ちになるのが特長だと思います。お人柄が歌にも表れているような…超特急のタカシとはまた別の、松尾太陽としてなりたい歌手像を教えてください。

超特急というのは、どちらかと言えばエンターティンメントの方に振り切っているグループです。僕は自分たちしか、ああいうグループはいないんじゃないかって、勝手に思っているんですけど。

そして松尾太陽としては、超特急と違う要素を見せないと、ソロ活動の意味がないなとも思っていて。

――確かに、別の顔を見せたくなりますよね。

音楽の方向としても、1月に出した『Magic』のように英詞の曲など、新しいことにも挑戦して……。最近、聴いているだけでおしゃれな曲が増えていますが、僕はちょっと異彩を放つ存在になりたいです。

ジャンルにもあまりとらわれたくないし、70年代、80年代のテイストに、今のトレンドも取り込みながら、その間をくぐっていきたい。そうしたら本当にたくさんの方が見て聴いてくれる、そういったタイミングがいつかくるんじゃないかな。超特急でもそうなんですけど、もう完全なる夢追い人として、頑張っています。

――ソロとしての目標を教えてください。

まず第一に、お客さんの前でライブをすること。今まで、「超特急のタカシ」のソロイベントやソロライブはありましたが、松尾太陽名義で本格的に始動した頃には、もう新型コロナウィルスの影響真っただ中。皆さんの前でまだライブができていないんです。

――それは悔しい。

本当にお客さんを入れてのライブも、ツアーも、早くやっていきたいです。正直、ライブでみんなで盛り上がってからじゃないと、その先の目標はまだ見えないですね。

「この景色が見えた!」とか、ライブの本番真っ最中に思ったりするものなんですよ。

――その景色を見てからじゃないと、次が見えない。なるほど! やっぱりお客さんの前に立ってこそなんですね。

超特急は「8号車はメンバーだ!」と言っていますが、それは真理です。他のアーティストの皆さんにとっても、ファンというはそれくらい大きな存在だと思います。聴いてくれる方がいないと、活動する意味がだんだん、薄れてしまいますからね。

だから僕も聴いてもらうという受け身ではなく、自分から聴いてもらえるような活動がしたいし、クオリティーももっと上げていきたいです。

松尾太陽

――松尾太陽と超特急のタカシ、二足の草鞋を履いている心境を教えてください。

これはずっと変わらないんですが、まず超特急が主軸で存在するからこそ、松尾太陽があるんです。なので僕は、8号車を不安にさせないようにしようと、常に思っています。

8号車の皆さんが、僕のそんな気持ちを真っ直ぐに受け取って応援してくれているのは、本当に嬉しいです。

――超特急があっての、ソロ活動なんですね。

超特急がいないと、僕は今の人生が歩めていません。代々木第一体育館にも、武道館にも、さいたまスーパーアリーナにも立てていないし、そこからの素晴らしい景色も見れていないし、番組も持てていない。だから「自分は今後ソロでやっていこう」ってことには、全くなれません。

ソロ活動は「皆さんにいろんなエンターティメントを届けたい」っていう気持ちが、大きなきっかけでした。だからこそ、二足の草鞋はずっと履いていきたい。超特急も、松尾太陽も、どちらかを置いていくってことはしません。そこは改めてファンの皆さんに断言しますし、安心して着いて来てくれれば、本当に嬉しいです。

――ソロで歌い、活動してきたことで、超特急に活かせたことはありますか?

度胸がつきました! 実は2019年に「Utautai」の配信ライブをしたときは、バンドの方々が豪華なメンバーぞろいだったこともあって、ガッチガチだったんです。

今だから言えますが、もっと楽しめたのになっていう悔いが残ってて。でもそれを経た後の超特急のオンラインライブでは、緊張はしたとはいえ「どんなことがあろうとも、絶対に後悔しないだろう」という気持ちになれました。

更にいえば、2021年の僕はもっと何か変われそうっていう、ちょっとした自信にも繋がりました。

『体温』は、一生付き合える曲になる予感

松尾太陽

――今回リリースの『体温』は、ピアノ・トリオバンドのOmoinotakeさんの楽曲提供を受けています。これは、どういった経緯で決まったのでしょうか。

ディレクターの方といろいろ話していく中で、ミニアルバムの「うたうたい」とは違った要素を取り込みたいとか、3ヵ月連続で新曲を配信するのだから、今の時期こそ出せるものにしたいとか、そういったことを言っていました。

それを踏まえて、元々いいなと思っていたOmoinotakeさんにお願いしました。

――依頼の段階で、太陽さんのイメージをガッツリ伝えたのでしょうか?

今の緊急的な状況を、慮るような内容というのはありましたが、Omoinotakeの皆さんが独自の世界観を作ってくださったので、それは本当にありがたく、すごいことだと感じました。

デモテープではご本人が歌ってくださっていたんですけど、とてつもないくらい表現力があって、目を閉じて聴くと勝手にストーリーが頭の中で進んでいって、言葉に当てはめた風景が動く様子が見えました。

自分が歌わせてもらうにあたって、もっといい曲にしたい、しなければという気持ちが強くなりましたね。

――自分の色を出す工夫として、主にどんなことをされましたか?

気を付けたのはリズムです。一定のリズムよりも、ちゃんとオンというか、ちょうどを当てはめる。もしくは後ろにする。本当にそういう小さなことに気を付けました。

この楽曲自体がJ-POPよりも洋楽寄りという印象があって、余計にリズムとかR&Bを意識しました。

――聴けば聴くほど、温かい気持ちになります。歌詞がまたいいですよね。

ありがとうございます。歌詞に関しては、本当にこだわって書いていただいています。あとOmoinotakeさんにはレコーディングにも来ていただいたのですが、ワンフレーズごとにアドバイスをいただきました。

ここまでしっかりした世界観を展開してくださったからこそ、自分のせいで薄っぺらくしたくなくて、そこはお互いストイックに仕事に臨みました。

――新しい歌い方を身につけられたようですが……。

うーん、でももっとレベルは上げていきたいです。また、この『体温』という曲は今もだけど、これから何年経っても歌える1曲だなって、思っているんですよね。

履けば履くほどなじむ靴、着れば着るほどなじむ服みたいな感覚で、歌えば歌うほど、いい雰囲気が出てくるんじゃないかな。

――育てていけそうな1曲なんですね。

今は多分、まだちょっと固いのかもしれない。もっと経ったらもっと柔らかくなっているはずなので、そういった変化をファンの皆さんに楽しんでもらえたらいいな。

10年後の『体温』を想像すると、僕自身も楽しみです。

松尾太陽