「私」と「彼」、たったふたりの出演者が一台のピアノと共に繰り広げる100分間ノンストップのミュージカル、『スリル・ミー』。
実際にあった衝撃的な殺人事件を題材にアメリカで生まれ、日本では2011年に初演された人気作が、2021年4月に2年ぶりに再演される。
これまで様々なペアが演じてきた「私」と「彼」は、日本初演10周年となる今回もトリプルキャスト。オーディションで選ばれたペア、松岡広大(私)と山崎大輝(彼)の対談をお届けする。
これぞ栗山民也の“厳正なオーディション”
──今回が初共演ということで、まずはおふたりの関係性を確認させていただきたいのですが……?
松岡 今日が初対面です!
山崎 会うや否やビジュアル撮影して、その足でここに来ました(笑)。
松岡 でも共演が決まって、動画は見させていただきましたよ。すごく歌える方だなって。
山崎 ありがとうございます。僕も広大君のインスタグラム見てますよ。それでなんとなく、あんまり喋らない方なのかなと思ったんですけど、お会いしたら全然そんなことなくて。「初対面だから喋らないと」みたいなギアが入ってるんですか?
松岡 全くないです! 単純にうるさい人間です(笑)。というか、人と話すのが好きなんですよ。どういう価値観とか論理を持っている人なのか、知っておいたほうが意思疎通がはかりやすいと思いますし。だからあの、無礼だと思われたらドーンと突き放してください(笑)。
山崎 いやいや、それはないですよ! 僕も、最初はどうしてもちょっと人見知りしちゃうんですけど慣れればけっこう喋るタイプで、広大君が静かだったら空回りしちゃうと思ってたから(笑)、喋る人で良かったです。
松岡 僕も、山崎さんが明るい方で安心しました! 稽古でもっと深く知るのが楽しみです。
──おふたりともオーディションを受けられたとのことですが、挑戦しようと思ったきっかけは?
松岡 僕は松下洸平さんと柿澤勇人さんのバージョンを観た時から、なんとなく「やりたいなあ」と思っていたんです。その後、僕が“演劇界の帝王”として尊敬している成河さんがやっているのを観て、「決めた! 俺もやる!」と(笑)。
俳優の力量が試される作品だと思ったこと、栗山民也さんとはいつか絶対にご一緒したいと思っていたこともあって、お声がけいただいてすぐに挑戦を決めました。
山崎 僕はお声がけいただくまで作品を観たことがなかったんですが、ピアノ一台のふたり芝居と聞いて、「うわうわ、すごい!」と。なおかつ内容も濃密で、実際にあった事件が元になっているという点にも惹かれて受けさせていただきました。
ただ、僕はミュージカルのオーディション自体あまり経験がなかったので、本当にめちゃめちゃ緊張してしまって。その時が初対面だった栗山さんもね? もうあの……
松岡 (眼鏡をずらしてじっと対象を見つめる仕草で)こういう感じでしたよね(笑)。
山崎 そうそう! これは届いているのだろうか? という気持ちになりました(笑)。
松岡 すごく分かります。細かいところまで見てくださっているからこそなのですが、あまりの反応のなさに、これが“厳正なオーディション”ってやつなのか! と思いました。
山崎 ほんっとにそう。だから受かったと聞いた時は、嬉しいと同時にすごく安心しましたね。