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布袋寅泰の40年を凝縮した2夜 日本ロックシーンの進化を目撃する

布袋寅泰のアーティスト活動40周年を記念した「HOTEI 40th ANNIVERSARY Live "Message from Budokan"」がいよいよ今週末、開催される。

キャリアとレパートリーを2夜に大別して日本の音楽シーンを牽引してきた布袋のキャリアを凝縮し、同時にアニバーサリーイヤーの口火を切るライブだ。

Memories――思い出・記憶とサブタイトルの付いた初日は、BOØWY、COMPLEXという音楽家としての地歩を固めた“原点”であり、パンク/ニューウェイブの初期衝動を基軸に日本のロックシーンに地殻変動をもたらした楽曲中心に披露。

Adventures――冒険・探求と冠された2日めは、ソロワークの幕開けを告げる作品であり、クリエイティブの源泉と言うべき『GUITARHYTHM』から今日までの集大成となる模様。その2夜に通底するのは「とどけ。」というメインテーマだ。

新型コロナウイルス感染状況を鑑み、無観客での生配信ならびに映画館でのライブビューイングという形態での開催とあいなったが、生活様式の変容を余儀なくされ、言い知れぬ閉塞感に覆われた日常を踏まえ、熟慮と覚悟のうえで響かせる 「とどけ。」というテーマこそ、布袋のロックンロールスピリットを正しく体現するものだと思える。

【Memories】

筆者が布袋寅泰という音楽家を初めて目にしたのは、新宿の老舗ライブハウスだった。

80年代初頭、現在とはおなじ街の少し離れた場所にあったその店のステージから、熱気を切り裂くように聴こえてきたギターのカッティング。

パンク/ニューウェイブ由来のどこか不穏な空気をまとった演奏と、ふっと顔をのぞかせる皮肉で洒脱なセンスが圧倒的な存在感を伴って、今も折に触れて思い返す。

その後、幾度か取材を重ねる機会に恵まれたが、20世紀も残すところ10年となった頃に実現したアーティストによる責任編集シリーズはなかでも印象深い。

“20世紀に残したい名盤100枚”を名だたるアーティストに選んでもらうという企画は大変に時間と手間のかかるもので、100枚なんて多すぎる、いや100枚なんて絞れない、とずいぶんとお叱りを頂戴したが、100枚というボリュームゆえか、選者の音楽的な原点やそれが流れていた時代、往時の心象風景までをもビビッドに照射する学び多き結実を得たと自負している。

布袋の100枚もその例にもれず、楽しい仕事だった。パブリックイメージから辿りやすいパンク/ニューウェイブの的確な選盤眼にうなりつつ、女性ボーカル、エレクトロミュージック、映画音楽、ジャズ、クラシックといった多彩なチョイスに舌を巻いた。

この特集は、のちにNHK FMの番組『ミュージック・スクエア』と連動する形で名盤を500枚ほどに増量し、選曲リストを全掲載し、ロンドンで撮影を行い、書籍『布袋寅泰のRadio Pleasure Box』(小社刊)となった。

今思えば、その後30年余にわたる“GUITARHYTHM”シリーズが世に問うたアート性の高い表現や現在のロンドン生活といった人生のピースがすでにひとつ、またひとつと置かれていたのだった。