妊婦がやっていいこと・よくないことを判断する方法
女性の社会進出と共に、出産・育児と仕事とのバランスをいかにとるかは誰にとっても課題。以前に比べて働く女性は出産・育児がしやすくなっているものの、まだまだ不安になったり、迷ったりすることも多いものです。
妊娠したらすぐに産休に入る人もいれば、お腹が大きくなるまで働き続ける人もいます。個人差はありますが、妊娠中に働く場合、「どこまでやっていいの?」と通勤・仕事で不安になることも多いでしょう。
産婦人科クリニックさくらの院長、桜井明弘先生によると、妊婦がやっていいこと、よくないことというのは、厳密に決まっておらず、そうしたデータもないのだそうです。
明確な基準がないという中、もし仕事で妊娠中に「これ、やっても大丈夫?」と不安になったときにはどうすればいいのでしょうか。(※今回お話いただいた内容は、すべて健康な妊婦さんを想定しています)
桜井明弘先生「一つの判断基準として、私はこのことをよく妊婦さんに伝えています。やっていいかどうか迷ったら、お腹の大きい妊婦さんがそれをやっていて違和感があるか、ないかで判断することです。
例えば、お腹の大きい妊婦さんが、駅までダッシュしたり、自転車に乗って高速で走ったりしているのは危なっかしくて見ていられませんよね。また、煙草もお酒も、お腹の大きい妊婦さんはやりませんよね。実際、そういう方を見かけることもありません。
『お腹が大きい妊婦さんならやらないな』と思ったら、まだ妊娠初期のお腹が小さい時期でも、やらないほうがいいです」
妊娠中に無理しちゃいけないことって?
お腹が大きい妊婦さんがやりそうにないことは避ける。仕事で生じるあらゆる行動についても、その判断基準で考えてみましょう。
でも、具体的な細かい行動で、無理をしてはいけないことの判断がつきにくい場合もありますよね。
そこで桜井先生に、通勤、仕事スタイル、飲み会、社員旅行などそれぞれについて伺いました。
通勤
1.電車
「乗ってはいけないことはありませんが、首都圏の通勤ラッシュではお腹がぶつかる可能性があるため、ラッシュは避けたほうがいいでしょう。
また、つわりや体調の変化で電車通勤が厳しいのであれば、職場に遠慮なく申し出て、ラッシュの時間を避けるために出社時間を調整してもらったり、時短勤務にしてもらったりすることも大切です。自車通勤に切り替えるのもいいでしょう。とにかく無理はしないことです」
2.車
「よく聞かれますが、車の振動は問題ありません。ただ、運転をしているときに陣痛がきたり、破水したり、出血したりするなど突然の症状に対応できない可能性も。妊娠後期の車通勤は避けたほうがいいでしょう」
3.自転車
「自転車の振動で流産するといったことはありません。ただ、私は自転車は避けたほうがいいと思っています。なぜなら自転車は万が一、事故になったときにトラブルが大きくなりやすいからです」
4.ダッシュ
「ダッシュはやめたほうがいいですね。内臓をひねったり、お腹が痛くなったりする可能性があります。また、自転車と同じで転ぶとお腹をぶつけるなどのリスクが、普通に歩いているときより大きくなります」
5.歩行
「普通に、適度な距離を歩くのはかまいません。むしろ歩行は妊娠中の運動不足解消や筋力維持、カロリー消費には必要でもあります。筋肉が落ちると、自然分娩の場合はいきむ力が衰えてしまうため、難産になることもあります。
ただ、運動はマタニティスイミングやマタニティビクス、マタニティヨガなど、妊婦さんが行っていいとされるものに留めてください。腹筋や腕立て伏せなどの筋トレは、お腹が圧迫されるものがほとんどなので避けましょう」