学校教育における、「総合的な学習の時間」という時間をご存知ですか?

これは2000年から導入された、生徒や児童が自発的に社会にある課題に対しての、多角的・総合的な学習を行う時間のことです。

この「総合的な学習の時間」が2022年度、まずは全国の高等学校を皮切りに「総合的な探究の時間」に変更になります。

しかし、そもそも「総合的な学習の時間」というものが何か分からない、2022年に何が変更になるのかも分からない、そんな人は多いはずです。これでは、実際にその変更にあたって子どもに何をしてあげればいいのかの判断もつきません。

そこで今回は「受験も勉強も教えない教室」、そんな一風変わった学び舎、探究学舎の人気講師、福井健さんに、「総合的な探究の時間」とは何か? それによって子どもたちは何を学ぶことができるのか? それを踏まえて、親たちが子どものためにしてあげたいこととは? など、気になるポイントを教えていただきました。

そもそも現行の「総合的な学習の時間」って何?

ーー福井さん、本日はよろしくお願いします。早速なのですが、そもそもとして現在学校で行われている「総合的な学習の時間」とはどういったことをしているのでしょうか?

福井健さん(以下、福井)「よろしくお願いします。探究学舎は、いわゆる学校教育機関ではないので、今回はあくまで“学校教育について常に情報収集して研究している”という立場からお話させていただければと思います。

まず、教育の歴史を少しさかのぼってお話することになるのですが、平成に入るまでは日本ではいわゆる“詰め込み教育”という教育がスタンダードだったと言えます。

これにはきちんとした理由があって、『国づくりの大目的に合う人間を育てていこう!』という方針があったわけです。製造業など、国として伸ばして行きたい分野が明確で、そのために必要な人材を生み出す方法も分かりやすかったんですね。とにかく勉強させて偏差値を伸ばして、良い大学に入って、大企業に入って……といった具合です。

目的に対する指標や目標を一義的に決めやすかった時代ですね。」

ーーこの記事を読んでいるパパ・ママの世代でも、その詰め込み教育を施されていた人はいそうですね。もしかしたら、その後の“ゆとり教育”世代の方が多いかもしれませんが。

福井「まさに、その“ゆとり教育”というものが、詰め込み教育へのアンチテーゼとして生まれたものです。『これまでと同じ詰め込むだけの教育だけで大丈夫なんだっけ?』という疑問から生まれたのがゆとり教育、そして『総合的な学習の時間』です。『総合的な学習の時間』は、法律的には2000年から導入されています」

ーー2000年……とすると私(筆者:35歳)もその「総合的な学習の時間」を経験しているはずですが……。

福井「記憶にない……という感じですかね。実はそういう人はかなり多いと思います。

この『総合的な学習の時間』というのは、教科に対する知識を詰め込むだけではなく、社会にある課題について多角的・総合的に課題解決しようというものです」

ーー……具体的に言うと、どういうことでしょうか?

福井「はい、まさにその反応が正しいと思います(笑)実は教育の現場でも『で、何をすればいいの?』という部分が不明確で、しかもその内容や実施方法は各学校に委ねられていたんです。

そうなると各学校の判断で、『“総合的な視点から”この時間は受験に役立つ演習問題を解く時間にしよう』『“学校生活の総合的な集大成である”修学旅行の準備に使いましょう』などとなってしまうんですね。

つまり、足りない時間を補うためだけに使われてしまっていた、ということが多かったのです。

これが、多くの人が『総合的な学習なんてやったっけ?』となってしまった原因でしょう。

時間割には『総合』と書かれているけれど、それをきちんとやっている学校は一握りで多くは形骸化してしまっている、という状況だったのです」