お店側として、最も「利幅」が少ないのは意外にも……!?

ときには利益がなくとも販売する場合も

――なるほど。これも言いにくいかもしれませんが、お店側にたってみると、「丸ごと一尾」「柵」「刺身」……ぶっちゃけどれが一番利幅が良いのでしょうか?

川崎真論店長:実はこれも大差がないのですが、強いて言うと「柵」が最も利幅が低いです。

――そうなんですか? なんとなく「柵」が一番利幅が多そうな気がしていました。

川崎真論店長:「柵」はグラム売りですので、極限まで安くしないとならず、どうしても利幅を削らないといけません。

鯛の柵。自分にとって食べられる量を選べるのが利点です

一方、「刺身」は大葉、つまなどの付加要素があるため、そこで利幅を乗せられそうに思われるかもしれませんが、例えば定番魚の「鯛」などだった場合、できるだけいつも仕入れておかないといけません。しかし、魚の仕入れ価格には変動があります。

とは言え、「刺身」は特にそうですが、昨日と今日とで価格を大幅に変えるわけにもいきません。

このため、ある程度価格に安定感を持たせるために、前後の入荷時の損得を踏まえながらやらざるを得ず、そのため「刺身」も利幅はそれほどでもないのです。

鯛の刺身セット。お皿に盛ればそのまますぐに食べられるのが利点です

――となると、やはり「丸ごと一尾」が最も利幅が大きい、ということになりますか?

川崎真論店長:そのように捉えられるかもしれませんが、これも一概には言い切れません。やはり、仕入れ価格はその日ごとに違うわけで、仮に安く大量に仕入れられた場合は利幅も大きく乗せられるでしょう。

しかし、そういうことは稀で、大半は前後の入荷時の損得を鑑み価格調整をしながら、できるだけ安くお客さまにご提供できるように設定しています。

ですので、ときには特定魚種の丸ごと一尾に対して「全く利幅がない」なんていう場合もあるんですよ。

――そうなんですか?

川崎真論店長:はい。それでも明日以降、またお客さまに来ていただけるようにあえてやることもあります。

「丸ごと一尾」「柵」「刺身」のいずれも「お得である」という意味はこういうことなのです。