スフィア『Heart to Heart』(『つうかあ』OP)

『のんのんびより』や『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』などの人気作を生み出したアニメスタジオ、SILVER LINK.の設立10周年記念作として制作されたオリジナルアニメーション『つうかあ』。

サイドカーレーシングに挑む主人公コンビの姿を描く"青春アニメ"で"バディ・ムービー"な本作のオープニングを飾るのが、スフィアのニューシングル『Heart to Heart』です。

"充電期間"に入るスフィアにとって、活動休止前の最後のシングルとなる本曲。ひとつの区切りを目の前にして、今回も充実の楽曲に仕上がっています。

四つ打ちのビートがメロディを引っ張るAメロに始まり、突っ走るビートと、ソリッドなシンセフレーズが全編を彩るスピード感十分のバックトラックが兎に角カッコ良い本曲。……しかしながら、やはり主役になっているのは、スフィアのメンバー4人による歌声です。

歌い出しからラストまで響き渡る、4人の声が融合した完璧なユニゾンは、スフィアのヴォーカルグループとしての実力を改めてリスナーに伝えてくれますし、疾走感とメロディアスな要素を同時に感じさせるメンバーの歌の表現力は、この曲にとって大きな魅力となっています。

ユニゾンを中心とした歌唱とはいえ、それぞれの声とヴォーカルスタイルに突出した特徴があるので、歌声やメンバーのパーソナリティが埋没することなく、それぞれが"三者三様"ならぬ"四者四様"な色合いをシッカリと感じられる点も素晴らしく、スフィアにとって最大の武器が、やはりその"歌声"であるということを今一度痛感させられる楽曲です。

こだまさゆりさんのペンによる歌詞は、恐らく、アニメ本篇の主人公コンビを描写したものかと思うのですが、"わたし"と"きみ"の友情を描いた物語性は、スフィアメンバーのパートナーシップにも読み替え可能で、ファンならば思わずイマジネーションを膨らませてしまうような深みがあり、そちらも注目ポイントのひとつ。

若手声優アイドルグループから実力派ヴォーカルグループへと成長を遂げたスフィア。シングル曲でありながら、敢えてメンバーの顔写真を用いず、楽曲のイメージ単体で構成したジャケットデザインも何とも粋です。

大原ゆい子『煌めく浜辺』(『宝石の国』ED)

『宝石の国』のエンディングを飾る『煌めく浜辺』は、プロデュースワークのおもしろさが光る良曲。シンガーソングライターの大原ゆい子さんが歌うナンバーで、その幻想的な雰囲気は『宝石の国』の作品性にもピッタリとマッチしています。

テレビアニメ『リトルウィッチアカデミア』の主題歌としてリリースされた『星を辿れば』と『透明な翼』では、自身で作詞作曲を手掛け、シンガーとしては勿論、クリエイターとしてもその高い音楽センスをアニメファンに見せつけてくれた大原さんですが、最新曲となるこの曲では、プロデューサーとしてムーンライダーズ・鈴木慶一氏を迎え、また新たな音楽世界を届けてくれました。

一聴して耳に残るのは、鈴木慶一氏の作編曲らしい不可思議なメロディとリズムです。サビで響き渡る独特のビートは、この曲の個性を際立たせています。

とはいえ、そこに難解さはなく、曲の全体をコーティングしているのはポップな感性であり、童謡にも通じる優しさに満ちたエモーション。

ムーンライダーズらしい実験的なアプローチを用いつつも、比較的ポップで明快なナンバーが揃った名作アルバム『青空百景』の収録曲を思わせる、アーティスト性と親しみやすさがバランス良く同居した本曲は、聴きやすく、尚且つ奥深さのあるサウンドに仕上がっており、まさに聴き込めば聴き込む程、新たな魅力を見せてくれる楽曲となっています。

楽曲から漂う神秘的な雰囲気に、大原さんの声質もマッチしており、本曲における鈴木慶一さんと大原ゆい子さんの邂逅も、今期のアニソンがもたらした"ベストマッチ"のひとつといえるでしょう。

『魔法遣いに大切なこと~夏のソラ~』でもカヴァーされた『九月の海はクラゲの海』や『海の家』など、ムーンライダーズは"海"を歌詞のモチーフに据えた名曲を幾つも残していますが、そうした楽曲に通じる歌詞世界にも要注目です!