「ベートーベン」はイケメン? キャラクターの作り方

プレイ画面 ©CYBIRD

鈴木:それが大切だなと。どういうことかというと、バックグラウンドを紐解いた時に、苛烈な人生を行きてきた偉人の方が、ドラマチックにシナリオを盛り上げていくことができるのではないかと。

あとはネームバリューですね。たとえばピアニストならモーツァルトが多くの人にとって馴染みがあるのでは、という理由で、ネームバリューも考慮しながらセレクトしていきました。

新井:チーム内でも「この偉人はイケメンぽい、ぽくない」なんて議論になったりして楽しかったですね。

鈴木:ライター陣だけで話し合うとどうしても趣味が偏ってしまったりするんですが、フラットな感覚を持ったスタッフに聞くと「それはイケメンじゃない」みたいに言われたり。例えば新井は「ベートーベンはイケメンじゃない」と譲りませんでしたね(笑)。

――音楽室の肖像画のイメージが強いからでしょうか。

鈴木:社内のいろんな人に聞きましたね。

新井:どう生きてきたかをドラマティックに描きたいと思っていたので、職業もかぶらないように選びました。音楽家、作家、軍人からそれぞれ何人、といったようにバランスを考えました。

――中でも、ジャンヌ・ダルクが男性キャラクターとして登場しているのは驚きました。

鈴木:イケメンシリーズのシナリオを描く際、「大きな嘘をつく」というテーマを掲げていて、『イケメン大奥』であれば男女逆転の大奥だったり。その嘘の上に緻密なストーリーを組み立てていくから、お客さんもすんなり入り込めると思うんです。

『ヴァンパイア』も一見突飛な設定だとは思うんです。偉人がヴァンパイアとなって蘇っているということは、もしかしたらお客さまにとっては受け入れがたい設定かもしれない可能性もあるじゃないですか。そこはライター陣の間でも議論になったんです。

その時にジャンヌ・ダルクが男性という「嘘のアイコン」を入れることによって、お客さまに、「歴史にもいろんな解釈があるかもしれない」「これはそういう設定ありきなんだ」と思ってもらえたらという狙いがありました。

それに最近ですと他社サービスに出てくるキャラクターも男性の英雄が女性になっていたりして、そのあたりの抵抗も薄いのかなと感じています。

プレイ画面 ©CYBIRD

――蓋を開けてみて、実際の反応はいかがでしたか?

新井:ゲームリリース前に公式サイトにてキャラクターを発表したときの反響は大きかったですね。ジャンヌの男性化もこれまでと違う要素を見せることができたので話題になりました。

そこに対しての(お客さま側からの)抵抗はなかったですし、ひとつの味としてプラスになったのかなと。さらに本編が楽しみになったというお客さまもいました。

――ちなみに、キャラを作る上でビジュアルイメージはどの段階で決めるのでしょうか。

新井:キャラクター名、見た目、属性、の3つを最初に決めてバランスを見るという感じですね。その3つが決まるとチームの中での共通イメージもだいたい固まってくるので、そこから細かいところを設定していきます。

鈴木:お客さまの中には、「ツンデレ」が好きな人、「王子様系」が好きな人、と好みも違うので、限られたキャラクターの中でバランスをとって、パズルみたいに当てはめていきます。

基本的には箱推し(※そのゲームのキャラクター全員が好き)前提なんですけど、12人バランス良く、その中から少しでも推しができるように(要素を)入れ替えたりしましたね。