上司は「ひとりに連続して仕事をさせないこと」に気をつけて!

セルフケアをしっかりすれば、自分の健康を保つことができる。ここまではわかりましたよね。
では友だちや家族など、身の回りで五月病になってしまった人がいたら、どう接すればよいのでしょうか? 元気になってほしいけど、励まし方がわからない……。こんなときも、まずは「心身ともに休ませてあげること」が大事。
 

「基本は『がんばれ』と言わないこと。休む方向でアドバイスをしてあげてください。気分転換のために『山登りに行くといいよ』『アウトドアは気持ちいいよ』と体力を使うレジャーに連れ出す人がいますが、体と心は一緒。疲れている人に体力を使わせると、当たり前ですがよけいに疲れてしまいます。自分の身近な人が相当疲れているようだったら、体力的にも気力的にも負担にならないアドバイスをしてあげてください。例えば一緒においしいものを食べに行くとか、楽しい映画を観に行くとか、愚痴を聞いてあげるとか、まずはリラックスさせてあげてください」

また新入社員の部下を持つ上司の立場にとって、部下の管理は悩みのタネ。
自分の会社で五月病の部下を出さないようにするには、どうすればよいのでしょうか?

「基本的に残業しなくてもいい量の仕事を与えるのが健全な経営状態ですが、不況なのでそうも言っていられないですよね。人間は月40時間以上の残業が増えていくと、体調不良が出てくるというデータが出ています。最低でも月40時間以内の残業に収まるようにするというのが、上司や経営者に守ってほしいことですね。ひとりの社員が月80時間以上残業しないとできない仕事というのは、そもそもビジネスモデルとして失敗。まずは『ひとりの人に連続して仕事をさせないこと』が大事です。
いちばん辛いのは、『先の見えないトンネル』。例えばどうしても繁忙期だったら『2ヵ月だけはがんばって』と期限を決めて、その期限を必ず守ってあげましょう。ずっと忙しい生活をしなければいけないと思うと、気持ちが萎えてきてしまいます。でもこれは普通の体力がある人に限った話で、五月病のリスクがある人に無理をさせてはいけません」

奥田さん曰く、新入社員は「若葉マークを付けた車のようなもの」。いきなり過度の緊張を強いるのではなく、少しでも仕事がしやすい環境を整えてあげるのも、上司や会社の役割かもしれませんね。
 

ついつい深刻に考えてしまいがちな『五月病』や『うつ』の問題も、睡眠や食事など健康の基本を押さえるだけで、その危険をずいぶん回避することができるのです。
まだはじまったばかりの新生活。はじめからアクセルをふかしすぎずに、健康第一でがんばっていきましょう!


奥田弘美さん(精神科医・産業医)
臨床医・産業医として活動しながら、「より元気で幸せになる」をテーマに、やさしく楽しいメンタルヘルスケアや自己実現法を執筆や講演にて提案。雑誌・新聞などでも多数の連載・執筆経験を持つ。近著は、『ココロの毒がスーッと消える本』(講談社プラスアルファ新書文庫)、『部下をうつにしない上司の教科書 メンタルダウンを防げ!』(東京堂出版)。

 

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