どうして「モデレートタイプ」なのか
では、ここからは東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、どうしてこのホテルを建てたのか、その理由について考えてみることにしましょう。
東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテルがある場所は、もともと「東京ベイNKホール」というコンサートホールが建っていました。
ホールは施設の老朽化に伴って、2005年7月に閉館。
その後、長らく利用方法が決まらないまま放置されていたのです。
事態が大きく動いたのが、2013年12月のこと。
施設と土地を保有してた第一生命保険から、オリエンタルランドが買い取ることを発表したのです。
2015年から施設の解体工事が始まり、跡地には隣接ホテル用のエネルギーセンターだけが残されました。
ファンの間では「パークの立体駐車場を新設するのでは?」「新しいディズニーホテルを建てるのでは?」といった噂が流れたのですが、オリエンタルランドからの公式発表はなし。
そして2018年11月28日、ついに映画『トイ・ストーリー』シリーズをテーマにした、新しいディズニーホテルの建設が発表されたのでした。
では、どうしてここに「モデレートタイプ」のホテルを建てたのでしょうか。
実はトイ・ストーリーホテルの目の前には、2023年度の開業を目指して、東京ディズニーシーの新しいテーマポート「ファンタジースプリングス」の建設工事が進められています。
ここには、475室の新しいディズニーホテルも併設される予定なのです。
ファンタジースプリングスホテル(仮称)には、デラックスタイプの客室に加えて、最上級の宿泊体験を提供する「ラグジュアリータイプ」が初めてつくられる計画です。
パーク一体型ホテルとしては、これまで東京ディズニーシー・ホテルミラコスタがありましたが、このホテルはさらにその上をいくということでしょう。
つまり、トイ・ストーリーホテルは高級路線のホテルとは差別化するために、モデレートタイプに設定されたと考えることができるのです。
もちろん、周辺にある東京ディズニーリゾートのオフィシャルホテルとの差別化も目指しています。
宿泊料金ではオフィシャルホテルと互角に戦うことができますし、なによりホテルに帰っても映画の世界観を体験できるというのが、最大の武器になっています。
それは、トイ・ストーリーホテルの敷地内には、宿泊者しか入れないというルールからも分かります。
ショップやレストランだけの利用は認めない。
ホテルへの宿泊を通して、「おもちゃの一員になる」という体験価値を感じてほしい。
トイストーリーホテルからは、そのようなオリエンタルランドの思いが感じられるのです。
あくまでも推測ですが、キャラクター・グリーティングを導入するなど、宿泊者限定のサービスをさらに強化することで、周辺ホテルとより一層の差別化を図っていく可能性もありますね。