“ウンチ役”に立候補した子の勇気

こんなエピソードもあります。

「さるかに合戦」の最後の場面。猿が牛の糞(※糞ではなく昆布になっている話もあります)を踏んで滑って、そこに鴨居から臼が落ちてきて猿がコテンパンにやられるシーンがあります。

これは“牛の糞”がなければ成立しない話です。ですが、“ウンチ役”は誰もやりたがらない役です。

すると、ある子が「僕、“ウンチ役”やる」と言って劇が完成しました。その子が「ウンチがなければ最後に猿をやっつけることができないから」とまで思って立候補したかどうかはわかりませんが、ホッとした園側でした。

まとめ

「運動会で優劣を付けてはならない」と“全員、みんな一緒に手つなぎゴール”としたり、徒競走など個人競技を廃止して、玉入れや綱引きだけにする園もあります。(関連記事「「競争・順位付け」どう思う? 負けた子どもへのベストな声かけ」)

けれども、「運動会で転んでビリになってしまった」「幼稚園の劇でやりたい役に選ばれなかった」という挫折体験を通して、精神的なたくましさ、強さが育つように感じます。

受験に失敗したり、好きな人に振り向いてもらえず失恋したり、希望していた就職先からの不採用通知が来たり……。人生は思い通りにならないことのほうが多いです。

いま幼稚園に通っている子も、小学校に上がれば成績で優劣を付けられます。社会にでたら競争社会です。そんなとき、挫折や競争を経験しないで育ってきた子は、一度つまずいたら立ち直れないこともあります。

わが子が主役に選ばれなかったとき、親として「残念だなあ」と悲しい気持ちになってしまいますが、「これも大切な経験」と思ってみてはどうでしょうか。

「いつもわが子を1番にして下さい」という姿勢の親に育てられた子どもは、「いつも自分が1番でないと気が済まない」という、社会性や協調性の低い、自己中心的な大人になってしまうこともあるのではないでしょうか。

皆さんはどうお感じになりますか。