週刊少年ジャンプで連載開始してから9年、発行部数は累計4400万部を超え、このほどコミックスも50巻の大台に乗った人気作品『銀魂』。7月6日からは『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』が公開され、大ヒットと言われた前作(新訳紅桜篇)に比べてさらに40%増しという好スタートを切っている。
『銀魂』は江戸のかぶき町を舞台にしたSFチャンバラ人情コメディ。江戸時代の末期に黒船ではなく天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人たちによって開国を迫られ、幕府は弱体化、サムライは反乱に敗れてほぼ絶滅したという設定がある。
そんななかで生き残った数少ない“本物のサムライ”坂田銀時(銀さん)と仲間たちが騒動を繰り広げ、また苦難に挑む姿をド派手なバトル演出と泣かせるセリフの数々で描いている。
いまやジャンプの揺るぎない看板タイトルとなった『銀魂』だが、主人公の銀さんには、歴代のジャンプヒーローとは違った特徴がいくつか見られる。
今回は『銀魂』中心に新旧さまざまなタイトルを振り返りながら、“ジャンプらしい/ジャンプらしくない”ヒーロー像について考えてみた。
らしい点――昼行灯(ひるあんどん)型のヒーロー
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海賊王を目指す『ONE PIECE』のルフィ、ユリアを取り戻すために旅する『北斗の拳』のケンシロウ――伝統的に少年ジャンプには目標のはっきりした“目的型”ヒーロー像が多いが、『銀魂』の銀さんはその対極といえるだろう。
サムライの魂である刀を木刀に持ち替え、普段はさえない万事屋稼業。わりと美形だが死んだ魚のような目をしていて無気力、下ネタと酒とバクチと甘味が大好き。20代にして糖尿の徴候があるというヒーローにあるまじき駄目っぷり。まさに甲斐性ゼロな昼行灯の典型だ。
しかし不思議な魅力をもつ男でもあり、彼を慕って万事屋に入ったメガネ少年(新八)とチャイナ少女(神楽)をはじめ、敵として戦った者たちさえ惹きつける。
また、自分の中に“絶対に曲げられない芯のようなもの”を持っていて、彼なりの武士道を貫くためには巨大な宇宙怪物だろうと国家だろうと迷わず敵に回して戦う。仲間が理不尽に傷つけられれば本気で怒り、攘夷戦争の時代に“白夜叉”と恐れられた戦闘力が復活。あらゆる敵を斬り伏せる鬼神となる。
このように普段はカルい男を演じ、有事の際だけ最高にカッコ良いところを見せる昼行灯型のヒーローは、男性読者にとって永遠のあこがれ。少年ジャンプにも昔からこのタイプのヒーロー枠が用意されているようで、40代の人なら『コブラ』、30代なら『キン肉マン』『シティーハンター』などが思い浮かぶはず。
『銀魂』の少し前だと『るろうに剣心』の緋村剣心が近いタイプ。時代設定、主人公の武器や経歴を含めて両作品には共通点が目立つ。外敵から地球を守るとき以外は修行に明け暮れている『ドラゴンボール』の孫悟空も、広い意味ではこのタイプと言えるだろう。