らしくない点3――規制スレスレの危険ネタ
『銀魂』は歴代ジャンプ作品と比較して、ダントツに危険な描写が多いことでも知られる。
十代読者にはわからんだろうという下ネタ、ウ○コやゲ○の直接描写、男性器描写、他タイトルの過度なオマージュ、実在の人物をイメージダウンさせかねないパロディ描写……などなど。まずい部分はモザイクが入ったり伏字になったりしているが、とても隠しきれたものではない。
機動戦士ガンダムを丸々パロった“頑侍(ガンサム)”や、某議員をリアルにこき下ろした回は、ファンの間で伝説になっている。
どのくらい伝説かといえば、アニメ版で某議員の出てくる回がヤバすぎて放送休止にされたほどだ。
【参考】
蓮舫パロディで放送禁止となった銀魂232話の内容と諸事情 - NAVERまとめ
ジャンプ漫画として唯一これに近い下ネタ・不謹慎ネタを誇るのは、1996~1997年に連載された『幕張』くらいだろうか。だがあちらはシリアス要素のない純粋なギャグ漫画であり、アニメ化とも縁がなかった。
大ヒットしてメディアミックスも盛んな『銀魂』で、しかも昔と違って表現規制が厳しくなった今の時代に、これほど危険なネタを連発できるのはすごい。
もちろん我らが銀さんも下ネタまみれで、たびたび尻に異物を挿入され、日常的にゲ○を吐き、1ページ全コマにウ○コが出てくる決闘シーンをやらされ、キ○タマを2つとも潰される(のちに復旧)目に遭ったこともある。にも関わらずシリアスシーンでの魅力がまったく落ちないところは異色。
古くは『THE MOMOTAROH』『ジャングルの王者ターちゃん』『変態仮面』から連なる、ジャンプ史上でも数少ない“股間をさらけ出してもカッコいいバトルヒーロー像”を受け継いだのが、『銀魂』の銀さんと言えるだろう。
こういう特異なヒーロー像が発行部数日本一の週刊少年ジャンプで受け入れられ、50巻を数えるロングセラーになっている理由に、読者構成の変化が考えられる。いまだ少年ジャンプは公式に“メインの読者の年齢層は、自社調査では小学校5、6年から中学校1、2年で、12~13歳がピーク”とされ、グラフ上でも18歳以下の読者が約85%を占めている。
だが別の調査では『ONE PIECE』購買層の9割近くが20代以上の大人という結果もあり、男女別でも『黒子のバスケ』『BLEACH』あたりは女性読者が過半数に達するという。ジャンプ本来の想定読者層と、作品別のファン層にあるズレが大きくなっているということだ。
『銀魂』の購買層はデータが見当たらなかったが、作中のパロディネタを見れば30代以上がターゲットだと想像できる。
出版不況のご時世に手広くファンをカバーしようと思えば、いくら天下の少年ジャンプといえ容易ではない。『ONE PIECE』のような王道系ヒーローだけでなく、『暗殺教室』のようなシュール系ヒーロー、さらに『銀魂』のような自堕落オヤジ系ヒーローも必要ということだろうか。
古き良きバトルと修行がメインのジャンプを懐かしむ人には悲しい変化かもしれないが、今のジャンプもなかなか多彩なヒーロー揃いで楽しいものである。