新しいことに挑戦してくれる先輩たちがいたら、ついていかないと(満島)
いったい本作に登場するゴローはどんなキャラクターなのか? 園監督は独自の世界観の中で稲垣吾郎をどう料理したのか? だんだん気になってきたと思うので、ここでこの『ピアニストを撃つな!』の概要とキャラクターを紹介しておこう。
フランス、ヌーヴェルヴァーグの名匠フランソワ・トリュフォーの名作『ピアニストを撃て』(60)からタイトルと人物構成だけをいただいた本作だが、園監督は「トリュフォーの映画は大好きですけど、これはトリュフォーとは何の関係もなくて。どちらかと言うと、リドリー・スコット監督の世界観に近いかな」と嘯く。
そう言われてみると、この日の撮影現場に集まった俳優陣のヘアメイクや衣裳は何となくそれっぽいが、セクシーな衣裳を着たヒロインのフジコ(馬場ふみか)が疾走する本作は、どちらかと言うとトム・ティクヴァ監督のドイツ映画『ラン・ローラ・ラン』(98)を想起させる。
走って逃げるフジコを、不気味なマスクをした極悪人・マッドドッグ(浅野忠信)と手下のジョー(満島真之介)が追いかける。彼らが向かう先には天才ピアニストのゴローが……。
稲垣もそんなハイテンションで突き進む園子温ワールドの住人に完全になりきり、「さっきフジコとの出会いのシーンを撮ったんですけど、この衣裳の馬場さんを見て、僕は朝からドキドキしちゃいました」とテレながら告白。
「それに早速、顔を1ミリぐらいの距離まで近づけるシーンの撮影があったんですけど、目に焼きついてしまいました(笑)」と興奮気味に語り、馬場を「本当ですか? 嬉しいです」と喜ばせた。
自毛を黄緑色の短髪にしたジョー役の満島は、稲垣とは映画『おしん』(13)以来の共演となる。
「でも、あのときは一緒にお芝居をするシーンがまったくなくて。今回、やっと会えたから、すごくワクワクしたし、楽しいです。そうじゃなきゃ、髪もここまでやらない。
“カツラじゃイヤだ!”って僕が言ってこうなったんですけど、新しいことに挑戦してくれる先輩たちがいたら、下の者はついていかないと。内容以前にそこに加担したいという思いが強かったですね」(満島)。
その言葉を聞いて、稲垣が「ありがとうごさいます」と自然に頭を下げていたのも印象的だ。
さらに、冒頭からブチ切れた芝居を全開させるマッドドッグ役の浅野忠信が「今回は台本をあまり読み込んでなくて。すごく面白い役なので、現場で感じたまま、めちゃくちゃやればいいかなと思っています」と語ると、稲垣は「なんか、そういう映画のような気がしてきました」と何やら自分の中で腑に落ちた表情に。
「園監督はもともとそういう風に映画を作られていると思うんですけど、今回は特にそんな現場のライブ感が大切な気がしてきました。台本はあくまでもガイドであって、現場で変わることも多いですから」
それでは、稲垣にとって初めて臨んだ園子温監督の現場はどんな世界だったのだろう?