山井は普通であるからこそいいキャラ
――脚本を読んだときはどう思いましたか。
僕はこれまで舞台をメインに活動してきて、この作品も舞台が地盤にあるというか、舞台を作っていく中で起こることを映像にするというお話だったので、そこに対してはある意味ホームだし、やりやすいんじゃないかとは思いました。
あとはミステリー要素があったり、劇中劇があって、役を演じながらその役としてまた別の役を演じるという特殊なところもあったので、そこは読みながら「これができたらすごく楽しいんだろうな」と思っていました。ワクワクしかなかったです。
――他の6人のキャラクターには、ご本人をデフォルメしたような設定もあり、かなり個性的になっていますが、その中で演じた山井啓介の役割はどんなことだと思っていましたか。
たぶん一番普通というか、普通であるからこそいいキャラだと思いました。周りが個性豊かなので、山井に色を付けなくても普通にしていれば勝手にそれが色になると。それは現場に入って、他の皆さんの演技を見てより感じたところでもあります。
だから、山井に関しては作り込むようなことはほぼしていないです。ナチュラルな感じでいけました。逆に(劇中劇で演じる)妖精パックになったときに、ギャップを見せられたらいいなとも思ったので、そっちは個性を強めて出そうと意識していました。
――序盤、山井が他の6人が在籍している『劇団 SEVEN』の新メンバーとして入っていくところは、現実の三浦さんと重なるようなところもあって。
そこはまさにそのままの僕です(笑)。何の役作りもせずに感じたままにできました。
――ただ山井は一面的な人物というわけでもないですよね。
そうですね。僕、ありがたいことに人当たりが良さそうと言われることが多くて。本当はそんなことないんですけどね(笑)。だからわりとそのイメージに近い役をいただくことが多かったんですけど、山井にはそうではない部分もあるので、そのギャップを見せられるのもワクワクしました。やっと来たなって(笑)。
――演じる上で意識していたことは?
先ほども少し触れましたけど、わりと山井は素の僕と似ている部分も多くて、例えば、先輩たちからいろんな秘密を聞かされるとか。そういう経験もあるので、そのままの自分で個性を出さないことは意識していた部分かもしれないです。
逆に変に個性を出してしまうと、周りが個性を強めに出してくれているからそこに埋もれてしまうので、なるべくフラットな状態でいるようにしていました。
あとは、(監督の)堤(幸彦)さんからの演出で、回想の場面では山井が尖ってたところを表現したんですけど、僕自身は、台本を読んだ時点ではそういう山井だったことを全く想像していなくて。その演出で、山井の今のスタンスは、こういう尖った時期を経てできたんだとわかって面白かったです。
それを経て考えると、クライマックスの山井の裏付けができるというか。もともとは役者としてのエゴを持っていて、最初の状態は皮をかぶっていたんだなと。「なるほど、そういうことか」ってなりましたね。
――堤監督からは他にどんな演出がありましたか。
本読みのときにある程度の役の方向性を教えていただきましたけど、基本的にはそれぞれの役者がやるのものを見てくださっていた印象です。ここは何歩で歩いてほしいとか、ここで目を開けてとか、そういう細かい演出はありましたけど、役作りに関しての大きな部分は任せていただいてました。
あと、パックのメイクは堤さんの提案です。そのおかげというか、あのメイクに引っ張られてあの演技になったところもあるので、さすがだなと思いました。引き出していただきました。
――パックのキャラクターは振り切ってできた感じですか。
そうですね(笑)。今回の現場に振付で當間里美さんが入ってくださっていたんですけど、里美さんとは以前、別の作品で共演をさせていただいていて。
それで、パックのあの衣装と風貌とセリフ回し的に動きもあった方が面白いんだろうなと思った時に、僕にその動きの引き出しがなかったので、里美さんに「なんか気持ち悪いポーズはないですか?」って聞いて、教えてもらって入れました。
それをカメリハ(カメラリハーサル)のときにやってみたら、堤さんがそれに対して何もおっしゃらなかったので「これで行ったろう」と思って(笑)。ちょっと不思議な、ピエロ感があるというか、そういう動きを入れました。堤さんはそういう部分も受け入れてくださいました。