なじみの臨江街(リンジャンジエ)夜市へ
ヤンくんの両親は台北市内の臨江街(リンジャンジエ)夜市で蚵仔煎(オアジェン/牡蠣オムレツ)屋台を経営している。
私は飛行機を降りるとすぐにその屋台を目指した。
3年半ぶりの台湾である。久々に台湾の土を踏んだ暁には、最初に何を食べるか、何度シミュレーションしたことか。
ヤンくんの誘いに乗って台北を訪れたからには、一食目は蚵仔煎と決めていた。
空港に降り立ち、第1ターミナルのロビーを横切って自動ドアをくぐると、亜熱帯の懐かしい湿気が私を包み込んだ。
機内アナウンスのとおり、台北の天候はくもり。
気温は24度で日本とさほど変わらないけれど、日本では味わえない、ねっとりとした湿度が体感温度をぐっと上げる。早くビールが飲みたい。
アツアツの焼きまんじゅうにかぶりつく
臨江街夜市に到着したのは夕方4時頃。屋台群がちょうど開店準備を始める時間帯だ。
ヤンくん家族の蚵仔煎屋台は仕込みの真っ最中だったので、私たちは臨江街夜市で一番有名な水煎包屋台へ向かった。
この店には過去何度も訪れている。時間は早いが、すでに行列ができていて、相変わらずの人気店だ。台湾もコロナ禍を経験し、外出や外食が厳しく制限された。
けれど、あわててテイクアウトメニューを用意した日本の飲食店と異なり、台湾はもともとテイクアウトが当たり前の食文化。
小籠包でもあんかけスープでも、何でもお持ち帰りができる。会食などが多い大型レストランは痛手を受けたものの、屋台や小さな食堂はUber EatsやFood Pandaというバイク便が充実したおかげで、従来どおり、いやそれ以上の売上を確保した店もある。
水煎包屋台もかつてと変わらず、人気が衰えることはない。ひとつ変わったことといえば、屋台に立つ人の顔ぶれだ。
以前はタンクトップから豊かな二頭筋を見せていた中年店主が行列客をさばいていたのだが、今、目の前にいるのは10代後半から20代前半とおぼしき男の子たち4、5人。
はて、アルバイトだろうか? かつてここに立っていた店主の姿はない。