聞けば、彼らは店主の息子とその友人たちだという。タトゥーが入った上半身に黒いタンクトップという姿は、台湾の青春映画『モンガに散る』に登場した血の気の多い男の子たちを連想させる。

臨江街で育ったヤンくんはこの水煎包屋台の家族とも親しい。彼によれば、なかなか言うことを聞かなかった不良息子が観念し、家業を手伝うことを決意。

仲間とともに夜市一番の人気屋台を切り盛りしているのだという。

彼らが担当するのは、肉を皮で包み、大きな鍋で焼いて販売するのみ。肝心かなめの肉は父親が裏で仕込んでいる。

購入の最小単位は5個で65元。ビニール袋に入れてくれて、「辛いタレはいる?」と聞かれる。

食べ歩くなら、鉄板のそばに用意された竹串を1本もらっておく。

私は早速、ビニール袋の中に乱雑に入れられた熱々の水煎包を竹串でたぐり寄せ、口に運んだ。

【台湾6泊7日食べ歩きの旅①台北編】特大サイズの豬血糕を前に微笑まずにおれない筆者。アツアツの作りたてにピーナッツ粉とパクチーがトッピングされている。冷めると味が落ちてしまうので、温かく柔らかいうちに食べるのが鉄則

「気をつけて」というヤンくんの言葉を無視してかぶりつき、舌を火傷する。

ほどよく焦げ目のついた厚みのある皮をかじると、たっぷりの肉汁が流れ出る。これまた激熱で、2度目の火傷をしそうになる。

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  • 胡椒餅の大きさは直径7~7.5cm、厚さ4cmほど。白ごまのトッピング。
  • 中に野菜や五香粉などのスパイスが効いた肉餡が入っています。
  • 五香粉とピリ辛味の肉餡とカリッとした皮が美味しいです。
  • 【カルディオリジナル】台湾大根餅の素 60g:172円(税込)
  • 大根餅の素と水を混ぜて15分以上寝かせます。

でも、この肉汁がたまらなく旨いのだ。地面にポタポタと滴り落ちるが、ここは台湾の夜市。細かいことは気にせず楽しみたい。

(つづく)

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みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。