聞けば、彼らは店主の息子とその友人たちだという。タトゥーが入った上半身に黒いタンクトップという姿は、台湾の青春映画『モンガに散る』に登場した血の気の多い男の子たちを連想させる。
臨江街で育ったヤンくんはこの水煎包屋台の家族とも親しい。彼によれば、なかなか言うことを聞かなかった不良息子が観念し、家業を手伝うことを決意。
仲間とともに夜市一番の人気屋台を切り盛りしているのだという。
彼らが担当するのは、肉を皮で包み、大きな鍋で焼いて販売するのみ。肝心かなめの肉は父親が裏で仕込んでいる。
購入の最小単位は5個で65元。ビニール袋に入れてくれて、「辛いタレはいる?」と聞かれる。
食べ歩くなら、鉄板のそばに用意された竹串を1本もらっておく。
私は早速、ビニール袋の中に乱雑に入れられた熱々の水煎包を竹串でたぐり寄せ、口に運んだ。
【台湾6泊7日食べ歩きの旅①台北編】特大サイズの豬血糕を前に微笑まずにおれない筆者。アツアツの作りたてにピーナッツ粉とパクチーがトッピングされている。冷めると味が落ちてしまうので、温かく柔らかいうちに食べるのが鉄則
「気をつけて」というヤンくんの言葉を無視してかぶりつき、舌を火傷する。
ほどよく焦げ目のついた厚みのある皮をかじると、たっぷりの肉汁が流れ出る。これまた激熱で、2度目の火傷をしそうになる。
でも、この肉汁がたまらなく旨いのだ。地面にポタポタと滴り落ちるが、ここは台湾の夜市。細かいことは気にせず楽しみたい。
(つづく)
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