年金を繰り下げるとなぜ老後の不安がやわらぐのか

さきほど公的年金とは、『長生きリスクに備えた保険』と説明しました。言い換えると、『生きている間、ずっともらえる一生涯の保障』という大きなメリットがあるとも言えます。

しかも公的年金は、繰り下げることで受取金額がどんどん増額していきます。

一例を挙げると、65歳から受け取れる年金額を100%とした場合、70歳まで繰り下げると142%、75歳まで繰り下げると184%まで増額し、その増額した年金額は生涯にわたって受け取ることができるのです。詳細は「日本年金機構」のページをご確認ください。

確かに年金を受け取るのを先延ばしにするほど増額されることは理解できるけれども、何歳まで繰り下げると良いのかイメージが分からない人もいると思います。

具体的な例を挙げると、
夫婦2人の平均生活費が約26万円で、夫婦2人の平均年金額が約20万円と言われていますが、仮に夫婦2人ともが70歳まで年金を繰り下げたとすると受取金額は約28万円となり、夫婦2人の平均生活費である約26万円を上回ることになります。

数字だけみても繰り下げ受給のメリットは実感していただけると思いますが、心の動きについても着目してみてください。

65歳から年金を受け取り始めた場合、基本生活費が平均年金額を約6万円上回っていますので、その赤字を預貯金から毎月取り崩すことになりますよね。

毎月通帳残高が減っていくのを目の当たりにするとどうでしょうか。もっと生活費を切り詰めようとか、何かあったときのためのお金を残しておかなきゃとか不安は一向に解消されない状況下に身をおくことになりかねません。

しかし繰り下げ受給をすることで、平均生活費を上回る年金をずっと生涯に渡って受けることができるとわかっていると、安心感や心のゆとりが生まれ、前向きな気持ちをもって日々の生活が送れるのではないでしょうか。

結局、何歳まで繰り下げるかは自分次第

上記の事例はあくまでも一例であり、実際に受け取れる年金見込額や基本生活費によっても異なりますのでご自身の状況に合わせて一度調べてみることをおすすめします。

<老後の生活資金の算出方法の考え方>
1.現状把握(基本生活費を明確にする、年金額を把握する。)
2.何歳まで繰り下げると基本生活費を上回る年金が受け取るのか試算する。
3.65歳から繰り下げる年齢までの生活費相当額を準備する。

これらのポイントに基づいてご自身で計算してみるか、もしくはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみましょう。

繰り下げ受給は多くの方が長生きするという視点において、経済的にも気持ち的にも安心感が得られる効果があるかと思います。

セカンドライフを心身共に豊かに過ごせるように、公的年金と貯蓄のバランスをうまく取りながら有意義にお金を使えると良いですね。

【執筆者プロフィール】計倉 宗州(とくら そうしゅう)

キッズ・マネー・ステーション認定講師/DCプランナー/ファイナンシャルプランナー
子供達にはお金を稼ぐことを人生の目的とするのではなく、稼いだお金で自分らしいお金との付き合い方をみつけ、自立して堂々と生きていく“おとな”になってもらいたいと考え、都内及びつくば市を中心に自分らしさを見つけるワークショップや個別相談を行っています。

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。公式サイト「キッズ・マネー・ステーション