母親は、子どもが成長するにつれて、“離別感”を持つことが大切になってきます。
離別感とは、「相手(子ども)と自分は違う人格や考えを持つ、別の人間」という感覚のことです。
しかし、実際は、離別感とは真逆の“一体感”を持ち続けたまま子育てをしている母親は少なくありません。離別感を持った子育ては、子どもがのびのび育ちますが、一体感を持った子育ては、子どもにいろんな弊害が出ることになります。
離別感と一体感、あなたはどちらを持って子どもと接しているでしょうか?
一体感が子どもに及ぼす影響と、一体感を持つ親の特徴・離別感を持つ親の特徴をお伝えします。
“一体感”が子どもに及ぼす影響とは?
「相手と自分は違う人格や考えを持つ、別の人間」という離別感に対し、一体感とは、「相手は自分と同じ感覚・感情を持っていて当たり前だ」「相手は自分の思う通りに動いてくれて当たり前だ」と考えてしまう感覚のことをいいます。
本来は、乳幼児や幼少期の小さな子どもが母親に対して持つ感覚で、これを心理学では“母子一体感”と言います。
たとえば、5歳になる私の息子は、私が小説を読んでいたら、「これを読んで!」と、私の小説を取り上げて、自分の好きな絵本を押し付けてきます。そして、「声に出して読んで!」と言います。言う通りにしなければすごく怒ります。「ママは自分と同じ絵本を読んで楽しむべき」と思っているんですね。
これは、母子一体感からくる行動のひとつです。
母子一体感は、この時期の子どもが持つ分にはまったく問題のない健全な甘え(依存)なのですが、“一体感”をいい大人が持てば、少しやっかいです。
たとえば上司と部下の関係の場合、上司の一体感が強いと、部下が自分の望み通りの仕事をやってくれない場合、上司は怒り出します。
カップルの場合、女性の一体感が強いと、男性が自分と同じように愛を注いでくれない場合、「愛がない人」「冷たい人」と非難し出します。
母親が子どもに一体感を強く持ってしまった場合は、「あなたのために」という言葉で、親子の愛情という鎖で、子どもを自分の思い通りにコントロールしようとします。
いつまでも一体感を持って育てられた子どもは、常に母親の顔色を見て行動するようになり、生きるのに窮屈さを感じるようになります。自分の考えや決断に自信が持てず、自立心が育たなくなります。
母子は、もともとへその緒でつながっていて、文字通りひとつでした。一体感が生まれるのは当然と言えば当然なのですが、それを持ち続けたままの子育ては、他ならぬ子どもを苦しめることになるのです。