ナポリピッツァを修業するためにイタリアへ渡った日本人は数知れず。
その一方、60数年前、NYでピッツァ職人の修業をした若者がいる。
吉祥寺にある「トニーズピザ」のマスター、藤原亀吉さんである。
が、藤原さんが渡米した理由は、ピッツァ職人になるためではなかった。
「ケネディに会いたい一心で、なけなしの金でアメリカへ行ったんだよ」
23歳の頃、ケネディ大統領に憧れてNYへ渡った
若い人は〈ケネディ〉を知らないかもしれない。
ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ。
JFKとも称される、アメリカ合衆国の第35代大統領、その人。
43歳のときアメリカ史上最年少で大統領に当選した。
ハーバード大学卒業で、かっこよくて、スマートで、プレイボーイだった(はず)。
1961年1月20日、ワシントンDCの連邦議会議事堂の前で大統領演説を行った。
いまも語り継がれる、伝説の演説といわれている。
ネットでも読めるので、興味がある方は一読をおすすめする。
ケネディの大統領演説に心を打たれた藤原青年は、23歳の頃1963年に渡米。
「飛行機は高くて乗れず。貨物船でロングビーチに到着し、NYをめざしました」
NYでさまざまなアルバイトをしつつ、ケネディ大統領に会えるチャンスを待っていた。
1963年11月2日、NYで念願の夢がかなった。ホテルアメリカーナの1階でケネディ大統領と会うことができた。
「会えたって言ったってケネディがいた部屋の前を通りすぎただけ。一瞬だけだったけど、感動して足が震えたよ」
その20日後、ケネディがテキサス州ダラスで殺害された。
ケネディに憧れ、NYで政治を学ぼうと考えていた藤原青年は、心の拠り所を失った。