続編が作られつつスピンオフも盛んな有名タイトルといえば、『グラップラー刃牙』シリーズが挙げられる。1991年から秋田書店の週刊少年チャンピオンにて『グラップラー刃牙』『バキ』『範馬刃牙』とタイトルを変え、累計100巻以上も連載が続き2012年にひとまず完結。そして今年3月、かねてから予告されていた続編『刃牙道』がスタートした。さらにスピンオフとして『バキ外伝 創面』『バキ外伝 拳刃』を展開中。タテヨコ両方に世界観が広がり続けている。
 

冒頭に出てきた『るろうに剣心』にも、厳密にはスピンオフではないが『るろうに剣心 -キネマ版-』という別作品がある。

これは実写版の第1作公開に合わせる形で、2012年から短期連載を開始したもの。2013年にひとまず終了し、今は上下巻セットの単行本『るろうに剣心-特筆版-』で読むことができる。

舞台や主要キャラクターはほぼ原作と同じだが、剣心と薫の出会った経緯が違う、斎藤一の性格が少し丸くなっている、左之助が必殺技「二重の極み」を最初から習得しているなど、設定・ストーリー面で原作とは別物になっている。キネマ版という名前の通り、全体的には実写版寄りな内容だ。原作のジャンプ版を愛するファンには批判される一面もあるが、スピンオフではなく“もう一つのるろうに剣心”として読めばかなり楽しめる。
 
 

また、漫画コンテンツの資産が豊富な日本だけあって、原作者の死後もスピンオフが作られている作品は少なくない。

毎年新作のアニメ映画が公開され、コロコロコミックでも『ドラベース ドラえもん超野球外伝』が連載中の『ドラえもん』(藤子・F・不二雄氏は1996年に他界)。2004年から秋田書店系列の雑誌で、多くの作家陣によってリメイク&トリビュート作品が描かれている『ブラックジャック』(手塚治虫氏は1989年に他界)などなど。

2010年に不慮の死を遂げた臼井儀人氏の代表作『クレヨンしんちゃん』もアシスタントの手で『新クレヨンしんちゃん』として連載継続中。さらに作中に出てくるキャラクター『アクション仮面』は、2013年からそのままのタイトルでスピンオフ連載されるようになった。スピンオフとしての『アクション仮面』は作品単体としてもなかなかおもしろく、興味のある方は公式サイトで第1話を立ち読みしてみるといいだろう。

麻雀漫画では『アカギ』がスピンオフ元の『天 天和通りの快男児』より人気になってしまい、スピンオフのさらにスピンオフ『ワシズ -閻魔の闘牌-』が作られたという珍しいケースもある。どの例をとっても、あらゆる原作からスピンオフを生み出せてしまう日本のクリエイターたちの実力には感心するばかりだ。