「元カノ」のこと

「その元カノさんは、依存体質というか彼氏にべったりだったらしくて、それがつらかったとあの人は言っていました。

その合鍵も、彼氏の許可を得ずにスペアキーを勝手に持ち出して作ったものだと言っていて、別れ際に返してほしいと言っても絶対に渡さなかったそうです」

そもそも、その別れ話自体に元カノは納得していなかっただろうことは、その後もしつこくLINEで「会いたい」とメッセージを送ってきていた、と聞いて友梨さんが感じていたことです。

それを「しつこくて大変だった」と話す彼氏はすべてをブロックして終わらせており、別れてすぐに自分の部屋に置かれていた元カノの私物はすべて処分したことも、聞いていました。

「まさか……」

ごくりと息を呑む彼氏に、

「だって、おかしいじゃない?

私と付き合う前はこんなことなかったんでしょう?」

ふたりの交際が始まり、友梨さんが彼氏の部屋に出入りするようになってからこの怪異は起こっており、それも、元カノがどこかで彼氏の様子を見ていた可能性を強くしていました。

「……」

合鍵を使ってこの部屋に入り、自分の気配を感じる唯一のものがその写真であるとわかり、移動させる。

まるで「私を忘れないで」とでも言うようなそのやり方は、

「私を狙っているわけじゃないと、感じました。

私のことはどうでもよくて、ひたすら彼氏に向けて存在感をアピールするような感じで……」

と、友梨さんは元カノの執念にぞっとしたといいます。

思い出すのは、「いつも泊まりたがっていた」「少しでもLINEの返信が遅れると電話をかけてきていた」「忙しいと言うと勝手に部屋に入って待っていた」と、彼氏に愛される自分を見たがっていた元カノの様子です。

その未練が、別れた後もこんな思い詰めた行動につながるのではと、友梨さんは考えていました。