思いが通じて交際に至った彼氏がいて、幸せな時間を過ごしているのだけど、何か違和感がある。
「それ」は少しずつ存在感をアピールしてきて、ある日突然大きな恐怖を連れてきます。
自分ではまったくコントロールできないのが他人の気持ちで、それがふたりの日常に侵食するのを止めるには、どうすればいいのでしょうか。
ある女性が体験した「人の怖さ」について、ご紹介します。
晴れて両思いとなった彼氏
友梨さん(仮名/26歳)には、交際して2ヶ月の彼氏がいます。
ふたりは同じ社会人サークルで知り合って、意気投合して関係を深めていきました。
「彼から、半年前に彼女と別れた話は聞いていました。
理由は彼の仕事が忙しくてすれ違うことが多くなったからと言っていて、だから今度はお互いの事情を理解できる人がいいと話していたのを覚えています」
そのときの友梨さんは、彼氏が正直に元カノとのことを教えてくれたことのほうがうれしかったといいます。
友梨さんはデザインの仕事をしており、営業職の彼氏とは職種は違えど多忙さは同じくらいで、「励ましあっていける関係がいいよね」と話していたそうです。
彼氏のほうから「好きだ」と言われ、OKしてお付き合いが始まってからは、実際に会えない時間が続いてもお互いに次のデートを励みにしていました。
そのときは、「彼氏が話してくれた元カノのことについては忘れていた」という友梨さんでしたが、その存在は、ふたりの見えないところで息を潜めていました。
不気味な変化
「あれ?
この写真立て、ここだったっけ?」
と最初に友梨さんが気付いたのは、彼氏の部屋でテレビの横にある写真立ての位置が変わっている気がしたことでした。
「何のこと?」
と彼氏がこちらに来て、ふたりで「こうだった?」と顔を合わせたのが、半月ほど前のこと。
そこには、山の頂きでガッツポーズをする彼氏の写真が収まっていました。
「その写真は元カノさんが撮ったもので、デートで紅葉を見に行ったときに登った山だと言っていました。
気になるなら捨てるけど、と彼氏が言うので、かっこいいし大丈夫だよと答えたのを覚えています」
元カノが撮った写真であっても、そこにその人が映っているわけではないし、と友梨さんは特に気にしてはいなかったそうです。
始めに見たときから少しずつ横に移動しているような気がしたけれど、注意して見るようなものでなければはっきりとはわからず、そのときは短い会話で終わります。
ところが、それからしばらくして、元の位置に戻したと思ったその写真立てがやはり動いていることに、友梨さんは気が付きました。
「……どういうこと?」
友梨さんも彼氏も触った覚えはなく、それだけが意思を持ったように立つ位置を変えていることが、不気味でした。