船上酒場は飲み過ぎ注意
デッキに出ると右手に六甲の山々が見える。出航して1時間ほどで船は明石海峡大橋をくぐる。橋を下から眺められるのが船旅の醍醐味だ。
デッキにいるのは韓国人が多いが、英語圏から来たバックパッカーの姿も。
デッキの後部には「夢」というカフェ&バーがあり、ビールやマッコリ、コーヒーなどを楽しめる。
スタンダードと呼ばれる相部屋を利用するときは、窓のない部屋で見知らぬ人といっしょで少々息苦しいので、終日このバーで過ごす人もいる。
船旅の始まりは気分が高揚する。陽も暮れていないのに酒が飲みたくなった。いや、その前に風呂だ。船内には7、8人がゆっくりつかれる浴場とサウナがある。
飛行機と違って液体類の持ち込み制限がないので、新大阪駅で酒とつまみをたっぷり仕込んできた。
酒が足りなければ船内フロント脇の無人コンビニで買える。韓国のスナック菓子や乾き物、3種のワインのグラス売りもある。ビュッフェの夕食もあるのだが、以前食べたことがあるので予約しなかった。
自分の部屋でくつろぎつつ、窓外の波光や島々を眺めながら一杯、また一杯。
「ここは景色の変わる居酒屋ですね!」
缶ビールや缶チューハイを次々に乾す相棒Aが興奮している。
新大阪駅で買ったのは、奈良の「柿の葉寿司」と大阪の「とん蝶」だ。とん蝶は塩昆布と大豆と小梅の入った蒸しおこわ。
釜山では3日半、韓国料理漬けになるので日本らしいものがいい。つまみにも食事にもなるいいセレクトだ。
酔って眠り、朝になれば釜山に着いているという安心感で酒が進む。
相棒Aが言うには、ビールやチューハイのロング缶6本、ワイン1本、船内コンビニで買ったグラスワイン2杯とマッコリ1本を二人で空け、私はベッドに倒れこんだらしい。
時刻は22時。船が愛媛県今治市の来島海峡大橋を通過する頃だったそうだ。
3時過ぎに目が覚める。Google mapを見ると、関門海峡を通過中だった。熟睡感はあったが、座って飲んでいるときには感じられなかった揺れが気になってきた。
寝直して5時に目覚めれば朝の一番風呂に入れるのだが、揺れが大きくなってきたので寝付けない。対馬海峡に入った証拠だ。
二日酔い+船酔い。これがなかなか手ごわい。この船には過去2回乗っているが、初めての経験だ。となりのベッドにいる相棒Aが寝返りを打っている。眠りが浅くなっているのだろう。
5時過ぎ、ベッドから抜け出して浴場に行く。ひと汗流せば酒も抜けるのではと思ったが、甘かった。湯船の中でたっぷんたっぷん揺さぶられるので、まったくくつろげない。カラスの行水で退散だ。
うつらうつらしているうちに窓外に島影が見えてきた。揺れがおさまってきたのでデッキに出る。
右方向に浮かんでいるおにぎりのような形の五六島を見ると、釜山に来たんだと実感する。
さらに進むと南区の陸地が見える。左手には鍋をひっくり返したような形の影島が見える。
釜山という地名はここからついたという話にも納得の形状だ。
日本の風景と明らかに違うのは、タワーマンション群が目立つことだ。
釜山は海のイメージが強いが、じつは市の総面積の半分が山だ。
平地が少ないので発展すればするほど高層ビルが増えることになる。
釜山港大橋をくぐると、鯨の形をしたターミナルが見えて来る。その左手にはメタリックブルーのツインタワービル、さらにその左手には高速鉄道KTXが発着する釜山駅舎が見える。
「こんなに都会になっちゃったの?」
30年ぶりに釜山に来た相棒Aが驚いている。当時はコンテナばかりが目立ち、街全体が煤けた印象だったのだ。
フロント前で入国カードと税関申告書を記入して下船する。時刻は10時30分。
ターミナル内は500メートルくらい歩かされるが、入国審査も荷物検査もあっさり済み、11過ぎにはターミナルの外に出ることができた。
宿は釜山駅のすぐ脇にある東横INNなので、空中歩行路を10分ほど歩けば荷物を降ろすことができる。
船酔いからは解放されたが、昨日の酒はまだ残っている。釜山ほろ酔い旅の始まりだ。
※パンスタードリーム号は、大阪→釜山の月曜・水曜発が15時、火曜・木曜着が10時。金曜発が17時、土曜着が12時。
釜山→大阪の日曜・火曜・水曜発が15時、月曜・水曜・木曜着が10時。筆者が利用したツイン部屋(デラックススイート)の通常料金(2024年7月15日帰着まで)は、大人往復が40,000円、片道が23,000円。割引キャンペーンもよく行われているのでリンク先を要チェック。Instagram