中堅~ベテラン重視の傾向が強い少年誌のなかで、特徴的なのは少年ジャンプ。こちらは有名な“アンケート至上主義”により、新人作家たちによる激しい競争が繰り広げられている。『こち亀』のような聖域を除けば人気作家にも容赦はなく、アニメ化された『ボボボーボ・ボーボボ』を描いた澤井啓夫さん(14年)の次回作『チャゲチャ』がわずか8週で打ち切りになったのは有名だ。

少年ジャンプは『ONE PIECE』『NARUTO』『BLEACH』など50巻超えの長期連載漫画も多いが、それらの作者は共通して“現在の長期連載タイトルがデビュー作、または初のヒット作品”という特徴が見られる。ほかの少年誌と比べ、大ヒットを飛ばした作家がずっと継続して描き続ける割合は高くない。もちろん過去には鳥山明さんや北条司さん、今なら冨樫義博さんのように“少年ジャンプの連載作が2つ以上続けてアニメ化”という例外もあるが少数派だ。少年ジャンプでヒット作を出した漫画家は、同じ集英社の別雑誌に移籍したり、他社で活動を続けている例が目立つ。

 

この傾向を裏付けるように、『るろうに剣心』で有名な同誌デビューの和月伸宏さん(27年)は、2012年発売のコミックス『るろうに剣心 特装版』あとがきで次のように語っている。

(※映画プロモーション用の『るろうに剣心 キネマ版』を執筆するにあたり)
「やはり元々の掲載誌で日本一の発行部数の週刊少年ジャンプの方が望ましい。しかし現行連載と新人作家を最優先する週刊少年ジャンプでは載せられるのは読切一話分。」

驚くことに、5000万部以上を売り一時代を築いた大ヒット漫画『るろうに剣心』の新作読み切りでさえ、少年ジャンプでは一話分しか載せる余裕がないというのだ(結局『キネマ版』はジャンプスクエアに短期連載された)。どれだけ新人たちの競争が激しいのか想像できる。たまにジャンプ読者からは「あの作品をあそこで打ち切るなんて編集部は何も分かってない!」といった苦情(?)も聞かれるが、徹底した実力主義だからこそコンスタントに人気作が誕生しているのかもしれない。

今回は少年誌・青年誌の作家を中心に“漫画家歴の長さ”を見てきたが、キャリア20年を超える作家に限定しても到底フォローしきれる数ではなかった。日本漫画界の“層の厚さ”とそれを支えるクリエイター・編集者たちの努力に、あらためて敬意を表したい。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。