親としてやってはならない対応と解決策

黙って見守っているわけにはいかない事態も起こります。相手の頭に砂をかけたり、傷が深くなるほど噛んだり、スコップやバケツで殴るなど道具を使って攻撃する行為に及んだときです。

こんなときは親として「相手のおもちゃが欲しいとき、してはならないこと」をしつけていく必要があります。

次にやってはまずい対応と、賢い対応策をお話しします。

親のNG対応

大人が「ほら、こんなに痛いんだぞ」と子どもの腕を噛んだり、バシバシ叩いてみせる

子どもが友達を噛んだとき、「噛んだらダメでしょ!ほら、こんなに痛いんだからね!」と子どもの腕を噛み、悪い手本を見せているママがいます。

子どもは「なぜ、僕のことをママが噛むんだ?」と混乱します。さらに「ママは自分のことをわかってくれると思っていたのに…味方だと思っていたのに…」とショックを受けます。

そして、それが却って悪い見本となってしまい、親が見ていない場所で自分より力が弱い子や小さい子に対して噛んだり叩いたりします。

親が子どものやったことを真似するのは止めましょう。

「どうしてそんなことするの!」と原因を追究する

よその子を叩く我が子を見て、つい頭に血が上って「どうして、お友達にそんなことするの!」と原因を追究する言葉をかけてしまうことってありませんか?

叩く理由なんか子どもは答えられません。親の怖い形相を見て「これこれこういう理由で攻撃しました」とは言えません。「お友達のおもちゃを使ってみたい」また「自分の大事なおもちゃを持っていかれそうになって焦った」そんな、やむにやまれぬ事情があったのかもしれません。

親の方が“瞬間湯沸かし器”のようになって「どうしてそんな行動をとったのか」と詰め寄るのは止めましょう。

こんなときは、まず子どもの気持ちに共感して、その後にどうしたらよいのか手段を教えましょう。

例えば…
「おもちゃが欲しかったんだね。だから叩いてしまったんだね。でもね、それはよくないこと。『ちょうだい』とお口で言おうね」

言葉が出ない子は「こうやって『ちょうだい』ってやってみて」と親が動作の見本を示し、それを真似させましょう。

「ごめんね」と無理矢理謝罪させる

©あべゆみこ

ちょっと相手を叩いただけなのに「手を出すことだけは絶対に許さない!」と「ごめんねは!ごめんねは!」と形式的に謝らせてはなりません。

「ともかく謝らせよう」と言葉だけに親が固執してしまうと、子どもは「取りあえず、謝ればその場を逃れられる」と学習してしまいます。なぜ、その手段がよくないのかきちんと本人が納得しないと、「ごめんね」といった先から相手に危害を加えます。

赤ちゃんの延長と考えよう

生まれたての赤ちゃんは「お腹すいた!」「オムツが濡れた」「暑いから脱がせてほしい」と言葉では言えません。だから泣いて訴えます。この頃の赤ちゃんは友達を噛んだり、叩いたりすることが出来ませんから、親は原因を探り「よしよし、今、不快な状態を取り除いてやるからね」と世話をします。

でも、1歳、2歳もまだその延長なんです。たとえ言葉が出ていても、たくさんの語彙を使って流暢には話せないのです。言葉で相手とうまくコミュニケーションが取れないとき、手っ取り早く、歯や手や足が先に出てしまいます。

この気持ちを「○○が欲しいんだね」と大人がまず汲んでやり、どのようにすればよいのか一つ一つ丁寧に教えていきましょう。

3歳以上になって噛みつきが続いている子はあまりいません。力に頼らない交渉術として言葉を会得していくからです。1歳、2歳で暴力的な手段をとるからといって、将来暴力的な子に育つわけではありませんよ。

ママ同士で打ち合わせをしよう

子どもは友達と喧嘩をすることを通して“人間関係の作り方”を勉強しています。積み木や電車などのおもちゃを武器にして相手を攻撃することがない限り、大人が手出し口出しをしないことが大切です。

ある親の会では「親ができるだけ介入しないで見守っていよう」と取り決めをして、相手との諍いをあえて体験させることを優先していました。

親が先回りして「ダメよ、ダメよ」と禁止しない姿勢は子どもの成長のために、欠かせないことだと思います。