事実を曲げることのリスク

この騒動は、Aさんが何も言わなくなったことで自然に消えていきました。

Aさんが藍子さんに事情を説明することはなく、元カノとはどんな話をしていたのかは、今もわかっていません。

男性が元カノに連絡することはなく、「今まで通り、ふたりで過ごしました」と、それまでと変わらない男性の様子に藍子さんは安堵したそうです。

何が「事実」なのか、LINEでのやり取りが残っており元カノがそれから男性に連絡をしなかった状況を客観的に考えれば、やはりふたりは別れていたと受け取るのが自然です。

元カノが主張する「仕方なかった」が本当だとしても、それなら自分から復縁を求めるのが筋であり、男性が藍子さんと交際を始めてから「自分たちは別れていなかった」とするのは無理があります。

違和感は、藍子さんの登場を「彼を口説いた」形にしていることで、それを裏付ける証拠もなければ男性本人からもそんな場面は出てきません。

自分と別れてから仲良くなったのを「口説いた」と指すのは、元カノのほうが歪んだ見方をしているといえます。

「元カノは、彼が私に騙されたとか、そんな言い方をAにしたのではと思っています。

自分と離れている間に私が彼を口説いて、いつの間にか別れた形にさせられたのが、元カノの望んだ話のような気がしますね」

話を聞きながら見えてくる元カノは、そう遠くない距離で新しい彼女を作った男性への恨みや、藍子さんへの憎しみを抱えている気がしました。

それは当人の事情でしかなく、事実を曲げて吹聴するのは、不自然な点がかえって露呈することになります。

最後に追い詰められるのは自分であり、望んだ結末は訪れないだけでなく、味方も遠のくことを、忘れてはいけません。

「Aについては、そそのかされたっていい方は悪いけれど、もう少し私の話もちゃんと聞いてほしかったなと、それが残念ですね」

Aさんとは今も疎遠なままですが、元カノの一方的な言い分を信じる様子を思い出すと、これから信頼を向けるのは難しいのが藍子さんの現実です。

他人の関係に踏み込んで事実をよく確認することなく荒らすのは、自分の孤立を誘います。

別れた人が新しい恋人を作ることを許せず、その仲を裂きたいがためにおかしな噂を流す人は実際にいますが、その結果かえってふたりの絆が強くなるのも、よくあることです。

別れた痛みと正面から向き合えない弱さは自分に返り、結局は立場を悪くすることもあります。

人を恨むのではなく、自分の在り方はどうなのか、もう一度考える機会が必要ですね。

プロフィール:37歳で出産、1児の母。 これまで多くの女性の悩みを聞いてきた実績を活かし、 復縁や不倫など、恋愛系コラムライターとして活躍中。「幸せは自分で決める」がモットーです。ブログ:Parallel Line