「35歳の自分」への葛藤

「Aさんは、これまでお付き合いした女性はいるけれど、結婚後の生活のことで折り合いがつかず、別れた過去がありました。

『結婚は、自分を曲げてまでするものじゃないと思っています』ときっぱりと言い切るのを見て、自立した女性を信頼すると言っていたのを思い出しました」

自分と事情は違うけれど、同じように恋愛から遠ざかっていたAさんを知り、自分についても「全部じゃないけれど、休職していた過去などを打ち明けた」美咲さんは、「大変でしたね」と返してくれたことに、安心したそうです。

その後も、趣味や普段の過ごし方など、会社で会うたびに会話は増えていきます。

「LINEのアカウントを交換したのはAさんの提案で、『もし嫌じゃなかったら』と、このときも正面からきちんと尋ねてくれました。

久しぶりにドキドキして、『よろしくお願いします』って言いながらQRコードを差し出したら、笑ってくれました」

会社を離れて会話ができるようになると、ふたりの距離は一気に縮まります。

「あえて仕事の話は避けていたように思います」と振り返る美咲さんは、お互いについて集中して話せることが楽しかったそうです。

元彼のことや体調を崩したことなども正直に打ち明けた美咲さんに、

「一生懸命になるのは仕事で見ているからわかるけど、もっと自分を大切にして」

と、自分も働きすぎて胃を壊した過去を話してくれたAさん。

親近感は増していき、週末にふたりで食事をする約束もできるようになります。

このとき、美咲さんの胸に湧いたのは「35歳」の数字でした。

「Aさんは二つ年上の37歳で、お互いにミドサー同士で仲良くなって、この先どんな関係になるのだろうと、不安になりました」

「結婚は考えていない」とAさんは口にしており、自分も結婚にはそこまでこだわらないけれど、もし万が一恋人関係になれたとしたら

「結婚もしないなら、簡単にまた別れることになるのかも」

と、そのときのダメージを想像したそうです。

過去、体調を崩した自分について「時間を無駄にした」と実感していた美咲さんは、それを繰り返すのが嫌だったのだと、今は思っています。