たとえば、子どもがなにか失敗した時、「だから言ったじゃないの」というような言葉をつい発してしまったことはありませんか?
悪気はなくても、軽い言葉でも、そういった言葉が習慣になり、頻度が増したら、それはマルトリートメントにあたるかもしれません。
マルトリートメントとは、「不適切な養育」と訳され、子どものこころや身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称で、虐待とほぼ同義ですが、子どものためを思ってしていることが、実はマルトリートメントに該当することも少なくないのだとか。
昨年出版された、小児精神科医で脳研究に取り組む友田明美さんの著書『子どもの脳を傷つける親たち』に、マルトリートメントについての実態が詳しく書かれています。
驚くべきことに、研究の結果、親からのマルトリートメントによって、物理的に子どもの脳が変形するということが明らかになったというのです。
脳とはつまり、心です。
心の傷は肉眼では見えませんが、その影響は、学習欲の低下や、非行や精神的な病といった形で現れる場合があります。また、自己肯定感が低く、どこか生きづらさを抱えたまま大人になる可能性もあります。
マルトリートメントの種類によって、傷つく脳の場所が異なることもわかってきました。
今回は、心理的・精神的なマルトリートメントについて、取り上げます。エスカレートすると、差別や脅し、罵倒を繰り返すなど、言葉による虐待ともいえるかもしれません。
自分のなにげないひと言が子どもの脳を傷つけていないか、まずは普段の言動を振り返ってみましょう。
きょうだいを比較する言葉
「お兄ちゃんは成績がいいのにね」
なにげなく親が放った言葉が、ぐさっと胸に突き刺さって今でも覚えている、という経験、ありませんか?
同じことを、子どもにしていないでしょうか。
ありのままの子どもを見ず、他の子どもやきょうだいと比べてジャッジを下すのは残酷なことです。子どもが小さければ小さいほど、繰り返しそのような言葉を投げつけられれば、自分は劣っていると信じ込むようになるのではないでしょうか。
ひとりとして同じ子どもなんていません。きょうだいでも同じこと。違いを優劣で表すのではなく、その子にしかない個性と受け止めてあげましょう。
励ますつもりが逆効果の言葉
「どうしてできないの」
「もっとできるはずだよ」
こうした言葉は必ずしも子どもを傷つけるつもりではなく、親としては叱咤激励しているだけなのかもしれません。
ですが、度が過ぎたり、受け手である子どもの状態を無視して連発すると、ものすごいストレスがかかることになります。
子どものタイプにもよりますが、声かけは、子どもに合ったものを、子どもの状態をみながらすることが大切なのではないでしょうか。子どもにしてみたら、すでにがんばっているつもりなのかもしれませんよ。
度が過ぎる謙遜
「この子は本当に集中力がなくて・・・」
このようなことを、つい、人前で言っていませんか?本当にそう思っていなくても、自分の子どものことを言う時に、長所より短所を言う傾向が、日本人には多いですよね。
でも、それを子どもが聞いたら、どんな気持ちがするでしょうか。小さな子どもに謙遜が理解できるのはもう少しあと。子どもは言葉をそのままの意味で受け取ってしまいます。
さらに、「集中力がないから自分はダメなんだ」と思い込むようになってしまったら、自己肯定感の低い子どもになってしまいます。