秋になり、そろそろ年末の大掃除に向けて少しずつ断捨離を初めている方も多いのでは?
ですが、家の中に物が多いと片付けも掃除も大変です。やる気がなくなることもしばしば…。
最近では「ミニマリスト」という言葉もよく聞きますが、無欲、清貧といったイメージの「ミニマリスト」、ハードルは高そうに感じるもの。
「ミニマリストには憧れるけど、物欲もあるし、そんなシンプルすぎる暮らしは無理……」と思っている人にこそ読んでほしいのが、『脱力系ミニマリスト生活』(著:森秋子さん)。
「自分の欲望に忠実な脱力系ミニマリスト」と自称する森さんが、子育てをきっかけに「ミニマリストになりたい」と少しずつ身の回りのいろいろな物を手放したり、やめてみたりしてマイペースにミニマリスト生活を楽しんでいる様子は、まさに断捨離を進めている、片付けに悩んでいる、そんなすべての人の参考になるはず。
そこで著者である森さんに、「自分らしくミニマリストを貫くコツ」を伺いました。
「正論」より「欲望」を原動力に物を捨てる
――片付け術というより、まずは不要な物を手放すことを推奨してらっしゃいますが、思い切っていろいろな物を捨てる際の一番のコツはありますか?
森秋子さん(以下、森)「思い切って物を捨てたい理由で、世間でよく聞くのは『快適な暮らし』『上質な暮らし』『家族のため』とか、いろいろな美しい言葉で表現されています。でも私は、『格好つける』ことからまずは捨てることがコツだと思います。正直に『自分のため』にやらないと、捨てることがストレスになるからです。
『正論』よりも、『自分の欲しい生活』をがむしゃらに求める、『欲望』や『野心』が背中を押してくれました」
――欲望が原動力とは意外です。
森「私の場合は『あいつにきれいな部屋と言わせてやりたい』とか『物よりお金を増やしまくりたい』とか正直に、泥臭く求めるとうまくいきました。
私はなりふり構わず、やぶれかぶれで物を捨ててきましたが、物が減ってきて冷静になってくると『私が欲しいのは風です』とか、すまして話す余裕が出てきました。
でも、すまして話せる今になっても『捨てることで、たとえ傷ついてもいい』と覚悟を決めて思い切ったことは、自分の中でとても意味のある、大切な思い出です」
―――捨てて後悔したことは、ありますか?
森「捨てると傷つくこともあります。でも『傷ついて一生懸命向き合う姿』や『後悔して肩を落とす姿』は、『平然としてすましている姿』とか『平気なふりをして繕っている姿』をした自分よりも魅力的だと思います。
失敗、後悔したことが次の自分の糧になりました」
――子どものおもちゃから捨てていったと本書にありましたが、「これまだ使うかもしれないし…」とためらってしまうママも多いと思います。
森「私がおもちゃを1番多く持っていた頃は、部屋にはおもちゃが溢れていました。
おもちゃがたくさんあるほど、恵まれているはずでしたが、その頃が子どもを1番多く叱ってイライラしていたと思います。
思い切った量のおもちゃを減らしたら、自分の手で子どもを抱きしめる時間が増えて、『片付けなさい』『元に戻しなさい』と、せこく怒っている時間が減りました。
おもちゃは買い直すことがすぐにできます。でも、子どもを抱きしめられる時間はどんどん減ります。私は子どもの髪に顔を埋めるのが大好きなのですが、遊んできた子どもの髪の砂ぼこりの香りをかぐと、サバンナにいるような気持ちになれます」
――「あんまり減らしたら子どもがかわいそうかな…」と躊躇してしまいます。
森「私の場合は『子どものため』ではなく、『自分のため』におもちゃを捨てたら、子どもとの暮らしが輝きました。風船やシャボン玉とか簡単なものや、お風呂上りに子供の体をバスタオルで包んだときの体のぬくもりなど、お店では手に入らないものにこそ、たった1つの価値があると思います。
子どもの頃の私も、テレビを見ていて、母がただ隣に座って他のことをしているだけで安心していました。
私はたくさんのおもちゃを捨ててきたので、おもちゃを見ても『未来のゴミ』と思うようになりましたが、そのおかげで『未来のゴミ』を買わずに『お金』と『抱きしめる時間』を増やすことができたのだと思います」
―――お子さんはどんな反応でしたか?
森「おもちゃの減った部屋で、子どもは子犬みたいに転がっていました。多すぎるおもちゃの中で電子音にまみれていたときには気づかなかった、風の音や、虫や鳥の声に気がつくようになりました」