家にもっと「空間」や「隙間」を増やしたい

――掃除の3種の神器として、イタリアンほうき、ハタキ、マイクロファイバーを挙げてらっしゃいますよね。

森「マイクロファイバーの雑巾、実は最近やめてしまいました。

今は、タオルで作った昔ながらの雑巾で、小学生の頃やったようにバケツに手を浸して、雑巾を絞って床を磨いています。手が荒れず、今までで1番家が清潔に思えます。

『掃除グッズ、掃除テクを駆使する女』か『雑巾を絞って床を磨く女』か、どちらでも選べますよね。私は『雑巾を絞って床を磨く女』の方が素敵だと思っているので、そんな風に見られたいという野望のために『雑巾』を選びました。無心で床を磨いていると本質的なところで充実してきます。

『効率』も『スマート』も捨てた掃除は、娯楽に近いものがあります。ほうきと、はたきと、雑巾で、自己流で無茶苦茶に、ストレス解消と運動のために掃除しています。

イライラしているときなどは悔しくて磨いているので、自然と力が入り、窓も輝きます」

――ブログでは壁を取り除いて部屋を広くし、ベッドも捨てたと書かれていますよね。

森「『物』を増やし続ける生活で、私は『お金』と『自由時間』を減らしてきました。それに飽きたので、ここ数年間は『自由時間』と『お金』を増やすために『物』を減らす生活をしてきました。

今、家の中にもっと増やしたいのは『風』『空間』『隙間』なんです。

『生活』に完成はないので、今も試行錯誤の最中です」

家族が蹴り飛ばしていったスリッパ

――振り返って、ミニマリスト生活をはじめてよかったのはどんな点ですか?

森「私のミニマルな暮らしは、最初にお話したようにもっと『欲しいものを手に入れたい』『家事をしたくない』一心で続けています。物が多くて家事に忙しいときは、ひたすら『ゆっくり寝たい』という必死な気持ちでした。

100円グッズでおしゃれを演出したり、便利グッズで時短を求めても、ゆっくり寝れたことも、生活が素敵に輝いたこともなかったと気がつきました。

『収納』『整理整頓』に燃えたこともありますが、『整理整頓』も『美しい収納』も、私にはつまらないものでしたから。

『物』を減らして、『買い物労働』も減らして、自分の負担が減ってきたら、家族の蹴り飛ばしていったスリッパや、子どもが廊下にランドセルを捨てて出かけた跡を見ると、温かい気持ちになる、という変化が起きました。

『片付けていかなかった』『私はこんなに大変なのに』と、いまいましく思うよりも、『遊びに走って行った』元気な姿とか、『急いで仕事に出かけた』姿を想うほうが輝いて感じられます。

物を捨てたり、手放すことは苦しくて、傷つくこともありました。

楽に傷つかずに部屋を片付けていく方法があれば、私も知りたいと思いますが、『捨てた』先の『生活の輝き』を感じる喜びは、スマートに片付けてきた経験からよりも、傷ついて失敗、後悔した経験から得られたもののような気がします」

物を減らすことで家事が減り、育児ストレスも減らすことにつながるというのは、目からウロコの発想。

筆者も経験がありますが、片付けや収納に躍起になって、でもスペースに合う収納グッズがなくて探すのにネットサーフィンで1時間……なんていうのは、振り返るととてつもない徒労ですよね。

年末に向けて少しずつ片付け、掃除を始めようという方は、ぜひ本書を参考に「これは本当に必要か?」と身の回りの物や習慣を改めて見直してみてください。

生活がぐっとシンプルに、ストレスフリーになるかもしれません。

エディター&ライター。エンタメ誌などの編集を経て、出産を期にライターに。ミーハー精神は衰えないものの、育児に追われて大好きなテレビドラマのチェックもままならず、寝かしつけたあとにちょこちょこと読むLINE漫画で心を満たす日々。