『ひそねとまそたん』は、最終回がちゃんとおもしろい作品
――アニメ本編で、特に印象に残っているシーンはありますか?
岩崎:総じて、空を飛ぶシーンですかね。空を飛ぶという行為の高揚感って凄いと思っていて、「『空を飛ぶ』という表現は、こんなに気持ちが昂ぶるものなのか!」と観ていて思いました。アニメでも実写でも現実でも、空を飛ぶ姿には、人が抗えない気持ちよさっていうのがあるんだなぁ、と。
――では、劇伴が特に印象深く使用されていたシーンはありましたか?
岩崎:劇伴を映像に合わせるのは樋口総監督が全部担当していまして、総監督は、凄く音楽を大事にしてくれるので、かなり細かいところまでやられているんですね。
僕には音楽の使い方に対して、余り意図はないんです。映画ではありませんから。映画ならば、フィルムスコアリング(映像の尺や進行に合わせて作曲を行うこと)で、「ここは、こうしたい」というのがあるんですけど、テレビアニメのシリーズものであり、スケジュール的にそれは難しいので、今回は基本的に樋口総監督にお任せしようと。
4話の模擬戦のシーンは、僕が音を映像に合わせて作ったんですが、あれを全部やるわけにはいかないので、その他は樋口総監督に託しました。
やっぱり、樋口総監督は、かなり音楽に造詣が深くて、使い方も凄く上手なので、僕が付けてもそうはならいなという部分もありますし。まぁ、総監督が自身で付けているので、それはやっぱり良いものになりますよね。
――分業制ではなく、御本人がやっているからイメージともシンクロしやすいのでしょうね。
岩崎:本人が一番時間を掛けてやっている、楽しくて仕方がないと言っていました(笑)。そこは、樋口総監督の手腕だと思います。
――『ひそねとまそたん』という作品に対して、岩崎さんが考える見どころを教えていただけますか?
岩崎:作品に関しては、刺激的な部分もありつつ、最後がおもしろいという点がいいなぁ、と思います。ちゃんと最終回がおもしろいんですね。
最初は、少しほのぼのとした雰囲気で、隠された部分も多い為、とっつきにくい所もあるんですが、ちゃんと最後はおもしろい。先程のオープニングの話と繋がる部分で、やっぱり樋口総監督の挟持という部分を感じるし、最終的には素晴らしい作品になるから三ヶ月付き合ってね、って言える力強さを感じます。
――文字通りの「クライマックス」が最終回にキチンと待ち構えてくれているという。
岩崎:そうです。そこに付き合う良さってあると思うんですね。樋口総監督と岡田さんとボンズさんも含めて、そういう作品を作りたかったんだろうな、と。そこは見どころかなと思います。
――では、月末にリリースされるサウンドトラックの聴きどころを教えてください。
岩崎:サントラに関しては、主題歌もテレビサイズじゃなくて、フルサイズで入っている「全部乗せ」なアルバムになっています。エンディングに関しては、シングルでリリースした10個のバージョンではなく、11個目のバージョンが入っていてます。アイキャッチも入ってますし、ほぼ使った全ての音源を入れられているんです。僕一人で作っている強みですかね。
――余すところなく、作品の音楽がパッケージされていると。
岩崎:そうですね。丸々入っていますね。アルバムだと2枚組、44曲収録です。1枚目が「接触編」という前半部分、2枚目が「発動編」という後半部分の形で収録していて、どちらの盤もオープニング主題歌で始まり、AパートとBパートになっていて、それぞれ中間部分にアイキャッチが入っています。アニメ作品の作りに似せて制作していますので。そういった構成なんかも含めて楽しんでいただければと思います。
岩崎太整PROFILE
映画・ドラマ・CM等の様々な音楽を手掛ける作曲家。
代表作に入江悠監督 『SR サイタマノラッパー』シリーズ、 大根仁監督 『モテキ』、樋口真嗣監督・スタジオジブリ『巨神兵東京に現わる』、 小泉徳宏監督『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、入江悠監督『ジョーカー・ゲーム』、松本理恵監督・アニメ『血界戦線』などがある。
その他にも『東京駅プロジェクションマッピング TOKYO STATION VISION』音楽監督、 舞台『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』音楽監督など。
映画『モテキ』第35回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。『東京駅プロジェクションマッピング TOKYO STATION VISION』でグッドデザイン賞2013を受賞。
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