近年、シュラスコと呼ばれるブラジル料理を食べさせてくれる店が増えつつあるという。
20歳でボサノバと出会い、30年以上ブラジル音楽を愛してきた。けれど、考えてみたら、シュラスコもブラジル料理も未体験。シュラスコとブラジル料理の食べ放題の店が浅草にあると聞き、浅草へ向かった。
目指す店「キボン!」は、地下一階にあった。
ブラジル国旗が掲げられ、大型スクリーンにはブラジル音楽を奏でるDVDが写っていた。
生野菜やポテトサラダなどが並ぶカウンターもあれば、「カルネ・ディ・パネラ」(牛肉の煮込み)や「フェイジョアーダ」など、ブラジルを代表する料理がテーブルに用意されていた。
厨房の入口にシュラスコを焼くマシンが鎮座。
長い串に刺さったブロック肉がゆっくりと回りながら、香ばしそうに焼かれていた。
「南ブラジルの牛追いが野営地で肉を焼いて食べたのが、シュラスコの起源だと言われています。肉を刺した串を地面に立て、炭火などで肉を焼いていたようです」と、店長の戸島マウロ哲さんは教えてくれた。
この店ならではのシュラスコの食べ方があるという。
サラダや煮込み料理を取ってきたら、テーブルに置かれたマークの、グリーンを上にセット。しばらくすると黙っていてもスタッフが、焼き立てのシュラスコを持ってきてくれるというのだ。
「スタッフが眼の前でブロック肉をスライスするので、それをトングでつまみ、皿に盛り、召し上がってください」
サラダを食べていると、ブラジル人スタッフが焼き立てのシュラスコを運んできてくれた。
最初は豚肉のソーセージと手羽先。続いてサーロイン、イチボ、牛バラ肉、ラム、鶏のハツ、鶏肉のベーコン巻き、リブロース、牛もも肉などが、一番美味しいタイミングでサービスされる。
「食べたい」「食べたくない」、あるいは「あとでほしい」といったをコミュニケーションをスタッフと取ることもできる。
「まずは一通り食べてみることをおすすめします。肉はそれぞれ味付けをしてあります。各テーブルにヴィナグレッチというブラジルのソースが置いてあるので、お好みで付けて召し上がってください」
ヴィナグレッチはトマト、玉ねぎ、ブラジル産ビネガーで作ったソースだ。酸味のきいたヴィナグレッチをかけると、脂っぽい肉をさっぱりと食べられる。
味付けは塩が基本。極めてシンプル。もっと早くシュラスコを経験すればよかったと、何度も反省しました。自分は赤身の牛肉が大好き。ということもあり、アメリカンビーフやオージービーフを使っているこの店のシュラスコは、どれも美味かった。
ザラザラ感がある、ちょっと不思議な食感の肉があった。豚バラ肉だ。
「タロイモをすりおろして、乾燥させたものを付けて焼いています。とくに味はありませんが、脂を含んだタロイモと一緒に食べることで、肉の旨味が感じられます。シュラスコにはタロイモが欠かせません。食べ慣れると、これがないと物足りなくなります」
タロイモの粉末が付いた豚バラ肉は初体験だった。
もうひとつ、初めて経験する食文化があった。無数に穴があいた、焼けて焦げ茶色になった食材だった。