祥訓さんが作るミルクセーキも創業当初からの味
「『ミルクセーキ(850円)』もお飲みになりませんか。創業当時から変わらない味です」
ミルクセーキ! 昭和40年代に銭湯で飲んだ覚えがある。番台の脇に飲み物の販売機があった。自販機ではない。ガラス窓をあけて取り出す「手動式」の販売機だ。
牛乳瓶などといっしょに、瓶入りのミルクセーキが並んでいたっけ。湯上がりに飲む、冷たいミルクセーキがおいしかったなあ。
古城でも瓶入りか何かの、既製品のミルクセーキを出しているのだろうと思っていた。ところが、注文ごとに祥訓さんが作るというのだ。
「卵黄と牛乳とガムシロップをシェイカーに入れてシェイクします」
祥訓さんがシェイカーを20回ほどふって作ったミルクセーキを京子さんが届けてくれた。
【喫茶 古城】 昭和の味がするミルクセーキ
「60年代の味がするミルクセーキです」
ミルクセーキを飲んでいたら祥訓さんが来てつぶやいた。
「ミルクセーキ特有の、この泡がおいしいんです」
銭湯で飲んだ瓶入りのミルクセーキには泡もなかったし、サクランボも入っていなかったが、祥訓さんが作ってくれたミルクセーキは懐かしい味がした。
【喫茶 古城】 松井祥訓さんと京子さん
「最近、若いお客様が増えました。父もきっと喜んでくれているはずです」京子さんは目を細めた。
昭和な喫茶店に20代、30代の客が連日押し寄せているというのだ。この日は雨だったが、10時前から若い男女が広い店内で思い思いに過ごしていた。
以前は、近所の会社などの重役クラスのお客が多かったそうだ。お偉いさんばかりで敷居が高かったのか、若い客は少なかった。時代が代わり、いまはお客の主流が若者になったと京子さんも祥訓さんも喜んでいた。
「うちはすべてが昭和のまま。知らない世界に惹かれて若い人が来てくれます。若い方が来ると店が明るくなる。こんなに嬉しいことはないね」



















