通じていない

1~3歳児に
「そんなことをしたらお友達がとても嫌な思いをするでしょ」
「自分が同じようにされたどう思う?だから優しくしないとダメよ」
こんなことを言って説得しようとしても通じていないのです。

相手がどう感じようがお構いなし。「その玩具が欲しい」「自分が先に好きなおやつを選びたい」と思うのです。

ある意味、他人の目を気にしない“自分の気持ちに正直な生き方をしている”と言えますね。

どう伝えればいいのか?

では、相手の立場に立てない年齢の子には、どうやって伝えたらよいのでしょうか。

シンプルに伝える

他人の視点を入れないで「それはやってはいけないこと」とシンプルに伝えましょう。例えば、友達の玩具をいきなり奪い取ったとき「自分がされて嫌なことは止めなさい」ですと通じません。

「相手の立場に立ちなさい」と言うのではなく「今、お友達が使っている最中だから待っていなさい。欲しいときは噛みついたり叩いたりしないで『貸して』と言おうね」とどうすればよいのか、具体的に代替案を出すのです。

言葉がまだ話せない場合は親が“ちょうだい”のジェスチャーをして手本を示しましょう。

喧嘩する体験をさせる

©あべゆみこ

子ども同士の諍いを回避させようと大人がすぐに仲裁に入り「ごめんね、いいよ」と無理やり言わせて、「めでたし、めでたし」と大人がしてしまわないことが肝要です。

積み木を手に持って武器にして相手を叩いたり水や砂をかけたり、噛みついたりしない限りは見守りましょう。相手にやられる実体験を通して初めて「こうされると嫌なんだ」と相手の立場に立てる気持ちが育つからです。

他人の目を意識し過ぎると陥ってしまうこと

また、何でも“人に迷惑がかかるからやってはいけない”と叱る方法は通じないどころか、“人がいなければやっても構わない”と理解してしまいます。

例えば、「電車内では他のお客さんに迷惑がかかるから、静かにしていなさい」と叱っていると「たまたまその車両に他の乗客がいなければやってもいい」と子どもは考えてしまいます。

病院の待合室で騒いだリ、走り回ったりしている子どもに「皆がうるさいと思うでしょ」と言ってしまうと、「誰もいなければ大騒ぎしてもよい」と勘違いします。

こんなときはシンプルに「電車内ではお口は閉じていよう」「病院の待合室では椅子に座っていよう」とだけ伝えればよいのです。

親も言葉に気を付けて

親もつい「周りに迷惑をかけてはいけない」の気持ちが嵩じて、「ほら、運転手さんに怒られちゃうよ」とか「前のおじさんが怒っているよ」と口走ってしまいますが、これでは「怒られなければ大丈夫」となってしまいますよね。

また、これは裏返せば「ママは別に構わないのだけれど、周りがうるさく言うので静かにしていてね」と他者に責任転嫁しているようにも受け取れます。これでは社会のルールを教えて行くことは出来ませんね。

人に迷惑をかけない子?

「あなたのご家庭の子育ての方針はなんですか」と質問すると、「人に迷惑がかかることをしないように育てる」と返ってくることがあります。また「思いやりの心を持つように育てる」という答もあります。

そこで、つい「相手が嫌がることは…」と叱りたくはなりますが、社会性が未発達な時期は難しいのです。

それから、迷惑をかけない子どもなんて存在しません。迷惑をかけたりかけられたりしながら人として成長していきます。思いやりの心は“自分が大事にされる体験”を通して初めて育っていくからです。

心の理論がまだ育っていない年齢の子には「それはしてはならないこと」とシンプルに伝えた方が躾はうまくいくかもしれませんね。

皆さんはどうお感じになりますか?