~半導体人材不足の“根本”を断つ、KOSEN式 教育改革~


ミニマルファブで学ぶ高専教員

「優秀な学生を育てたい。しかし自分自身が製造装置に触れたことがない。」

 これは、一部の教員の問題ではなく、日本の半導体教育が抱える構造的な課題です。かつて大学や企業に多く存在した半導体製造の研究室が縮小するにつれ、実践的な製造経験を持つ教員が国内で急速に減少しています。育てる側が経験を持たなければ、どれだけ優れたカリキュラムを設計しても、その力は半減します。
 この「教育の空白」を埋めるために半導体人財育成を牽引する2校が動きました。
 
 独立行政法人国立高等専門学校機構(東京都八王子市、理事長:谷口 功、以下「高専機構」)は、令和8年3月23日・24日、旭川工業高等専門学校(北海道旭川市、校長:矢久保 考介、以下「旭川高専」)および、佐世保工業高等専門学校(長崎県佐世保市、校長:下田 貞幸、以下「佐世保高専」)において、全国の高専教員を対象とした半導体製造プロセス研修会を同時開催しました。
 日本の北と南、それぞれ異なるアプローチで実施された研修には全国から計12名の教員が参加。実際に製造装置を動かし、半導体デバイスの設計から完成まで、自らの手で体験しました。


イエロールーム内でのマスクレス露光装置によるリソグラフィー

■なぜ今、教員研修が必要なのか?

 “1人の教員が変われば、何百人もの学生が変わる”
 全国51校の国立高専には、毎年多くの学生が入学し、産業界へと巣立っています。その教育の質を左右するのは、教える側の実践的な経験です。
 半導体分野においては、大学の研究室縮小などを背景に、「半導体を実際に製造したことがある教員」が教育現場から失われつつあります。知識はあっても、体で知っている教員が少ないことは、半導体人財育成における見えにくくも深刻な「ボトルネック」です。
 高専機構が推進するCOMPSS5.0事業「半導体人財育成エコシステム構想」は、この問題に正面から取り組んでいます。今回の研修は、その中核施策の一つ。全国の高専教員が製造の「指導の勘所」を体得し、それを教壇でリアルに伝えられる教育者へと成長するための、人財育成の上流への投資です。

■旭川高専「半導体デバイス製造、全工程を手で知る」

 旭川工業高等専門学校(COMPASS5.0事業半導体分野ブロック拠点校)では、全国から集まった7名の教員を対象に、半導体デバイス製造の「フルプロセス体験研修」を実施しました。この研修は釧路高専で開発した教材の他高専への展開のモデルケースでもあります。

 設計からパッケージングまで、デバイス製造の全プロセスを一貫して自分の手で経験するこの研修は、「知っている」と「できる」の間にある大きな溝を埋める機会となりました。また、本格的な設備が整っていない環境でもダイオードの作製ができる教材の紹介もあり、意見交換会では自高専への展開について熱心に話し合われ、参加した北九州高専の坪田雅功教員は次のように話しました。
「教科書でしか知らなかった各工程を、実際に装置を動かして確認できたことで、学生に伝えるべき"指導の勘所"が明確になりました。今回得た知見を授業に取り入れ、より実践的で筋の通った技術者育成を目指したいと思います。」
――北九州工業高等専門学校 坪田 雅功 教員


レイアウト設計


リソグラフィー工程


ダイシング工程


検査工程


ワイヤーボンディング工程


完成した半導体パッケージ

■佐世保高専「ミニマルファブで半導体教育の“常識”が変わった」

 佐世保工業高等専門学校(COMPASS5.0事業半導体分野拠点校)では、全国から5名の教員が集い、「ミニマルファブ(Minimal Fab)」技術を活用した実践研修を実施しました。
 ミニマルファブとは、従来の巨大な工場設備(メガファブ)とは異なり、超小型・低コストの製造装置群を用いて少量の半導体試作を短期間で実現する革新的な技術です。

ミニマルファブが教育現場を変える理由


 研修に参加した富山高専の多田和広教員は、この体験が持つインパクトを率直に語りました。

「"半導体製造は時間がかかる"という固定観念が完全に覆されました。リードタイムの短さとシャトルを使った受け渡しの手軽さを実感し、たとえば佐世保高専でデバイスを作製してもらい、自校(富山高専)でその評価実験を行う、という形での学生実験の構築も十分に可能だと感じました」
――富山高等専門学校 多田 和広 教員

 ミニマルファブは、半導体製造の敷居を大幅に下げ、「製造」を全国のどこの高専でも教育の中心に据えることを可能にします。その事実を参加教員自らの手で確かめることができました。

ミニマルファブについての説明


シャトルにシリコンウェハをセット


ミニマルファブによる半導体製造


できあがったウェハと顕微鏡写真


ウェハをキーホルダーに格納


半導体製造の周辺機器の見学

■「1人の教員が、何百人の未来を変える」

 もちろんこの研修の価値は、参加した12名の教員に留まりません。
 それぞれの国立高専に戻った教員が、「指導の勘所」を自分の授業に組み込んでいく。その波及効果は、数年のうちに数千人、数万人規模の学生教育へと広がっていきます。


 「半導体を教えられる教員を育てる」―この地道に見える取り組みが、日本の半導体産業の底力を、最も確実に、最も持続的に引き上げる道です。
【半導体人材育成エコシステム構想】
 教員を鍛える(今回の研修)
    ↓
 教室・実験室が変わる
    ↓
 学生が「つくる・つかう・つなぐ」力を身につける
    ↓
 産業界へ即戦力人財を輩出
    ↓
 日本の半導体産業の競争力回復

 

■KOSENが描く半導体人材育成の全体像

 今回の教員研修は、高専が推進する半導体人財育成の大きな流れの一部です。
 2026年3月17日に開所した佐世保高専「半導体人材育成センター(S-PORT)」を司令塔として全国高専が連携しながら、この好循環を全国規模で加速させていきます。

【学校概要】

 ■旭川工業高等専門学校

 旭川工業高等専門学校は、自ら課題を見出し、解決する能力を身に付け、科学技術の分野で広く社会に貢献し、我が国産業の将来を担える人材の育成を目指した5年一貫教育の工学系高等教育機関です。未来技術人財育成教育プロジェクトCOMPASS 5.0 AI・数理データサイエンス分野の全国拠点校を富山高専とともに(R6年度よりMCC plus拠点校)、半導体分野のブロック拠点校を釧路高専とともに務めております。
所在地:〒071-8142北海道旭川市春光台2条2丁目1番6号
校長:矢久保 考介
URL:https://www.asahikawa-nct.ac.jp

旭川高専外観

 ■佐世保工業高等専門学校

 佐世保工業高等専門学校は、全国12の国立高専一期校のひとつとして1962年に設立され2022年で60周年を迎えました。本校が輩出してきた約10,000人は技術者・研究者として社会で活躍。その確かな実践力は各界から高い評価を得ています。令和4年度からは、GEARプロジェクトとともに、COMPASS5.0(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)として半導体人財教育も進めております。特に世界的な半導体拠点の形成が進む九州において本校は、熊本高専とともに「半導体分野の拠点校」として密接に連携し、日本の産業基盤を支える高度な半導体技術者の育成に、全力を挙げて取り組んでいます。
所在地:〒857-1193 長崎県佐世保市沖新町1-1
校長:下田 貞幸
URL:https://www.sasebo.ac.jp


佐世保高専外観図

 ■独立行政法人国立高等専門学校機構

 全国51の国立高等専門学校を設置・運営。中学卒業生を受け入れ、5年間一貫の技術者教育を実施。実験・実習を重視した専門教育により、20歳の卒業時には大学と同程度以上の知識・技術を習得。卒業生は日本の産業と社会の発展を担う中心的な役割で、約60年にわたり、ものづくり大国である日本を支えています。
所在地:〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2
理事長:谷口 功
URL: https://www.kosen-k.go.jp/

高専機構本部棟外観

■旭川工業高等専門学校半導体デバイス製造の「フルプロセス体験研修」に関するお問い合わせ 

独立行政法人国立高等専門学校機構 旭川工業高等専門学校
北海道地区4高専半導体人材育成連携推進室事務室
〒071-8142北海道旭川市春光台2条2丁目1番6号
TEL: 0166-55-8190
E-mail: hsemicon@asahikawa-nct.ac.jp
URL:https://www.asahikawa-nct.ac.jp

■佐世保工業高等専門学校「ミニマルファブ(Minimal Fab)」技術を活用した実践研修に関するお問い合わせ

独立行政法人国立高等専門学校機構 佐世保工業高等専門学校
学生課 半導体担当
〒857-1193 長崎県佐世保市沖新町1-1
TEL: 0956-34-8428
E-mail:s-semicon@sasebo.ac.jp
URL:https://www.sasebo.ac.jp/education/s-port/

■半導体分野全体に関するお問い合わせ
独立行政法人国立高等専門学校機構本部事務局 学務課教務係

〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2
TEL:042-662-3143
E-mail:kyoiku@kosen-k.go.jp
URL:https://www.kosen-k.go.jp/
取材・産学連携のご相談も随時受け付けております。


【報道関係者の皆様へ】
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