体を作る基礎でもあり、乳幼児期の子育ての核ともなる「食」。好き嫌いが多い、量を食べない、食べることに集中してくれない…など子どもの食に日々四苦八苦しているママも少なくないはず。
『子どもの頭がよくなる食事』を上梓した、とけいじ千絵さんは著書や講座を通して、子どもの味覚の育て方を伝えている人気フードアナリスト。
まだ思うように食べてくれなくても、今からでもできる食育はある?食でつまずいたとき、どのように解決していけばよい?と、とけいじさんに堅苦しくない食育のお話を伺いました。
食育の基本は“薄味”。口の中の食べ物に意識を向けることで味覚が育つ
――「子どもの頭がよくなる食事」を面白く読ませていただきました。我が家も来年から小学生なのですごく興味深かったです。
ただ、実際、周囲の親御さんを見てみると、子どもが食事をまともに「食べない」「好き嫌いが多い」で困っている方が本当に多いので、そんなお子さんたちにも今日からできる食育について伺いたいと思っています。とけいじさんが考える「子どもの食事でこれだけは気を遣ってほしい」ことから教えてほしいのですが…。
とけいじ千絵さん(以下、とけいじ):食育という意味で一番大事なのは“薄味”にすることですね。これはデータにもなっているのですが、小学生が実際取っている食事と、摂取基準の理想値で、一番かけ離れているものは油の多さでも野菜不足でもなくて、塩分の過多なんですよ。
――薄味にする。すでに、結構難しいことを言われている気がしますが…。
とけいじ:食育と聞くと栄養バランスや彩りのよいおかずを何品目も作って…というイメージがありませんか?
薄味にするっていうのは、たとえばお味噌汁や煮物なら水を少し足して薄めればいいってことなので実践するのは比較的簡単です。
濃い味に慣れてしまうことの何が問題なのというと、口に入った瞬間に「しょっぱい」など感じると、それ以上、食べ物の味について考えなくなってしまうんですね。
食べながら、口の中の食べ物に意識を向けること、「これは何の味かな?」と考えることが一番味覚を育てる方法なので、薄味を意識してほしいと講座や著書でも伝えています。
ただし、濃い味に慣れるっていうのもたった一食で慣れてしまうわけないので、外食したら、その次の食事を薄味にして調整するという工夫ができると良いですね。
幼児期は好き嫌いがあっても構わないし、たとえ完食できなくても「一口食べてみる」っていうプロセスがすごく大事なんですよ。
なんだったら口に入れたものをペッと出しちゃっても平気です。口に入れて味わった時点で、味覚情報は脳にインプットされますから。
幼児期にストックしておいた味覚情報をもって大人になるので食経験は豊富であればあるほどいいんです。
たとえ今の時点でピーマンが嫌い、青魚が嫌い、と思っても一口食べた経験があれば、成人するころには好きになっているかもしれない。
そうしたら残り50~60年の人生はその素材を楽しめますから。
好き嫌いが生じるのは当たり前。食わず嫌いにしないためにはとりあえず一口食べてみること
――うーん、確かに子どもの時点で好き嫌いされると落ち込みますけど、自分自身の経験も振り返ると味覚も好みも変わりますもんね…。
「最悪、口から出しちゃってもいい」はもっと周知されたら偏食や、食べないで困っているパパママもすごく楽になりそうです。
とけいじ:好き嫌いは2,3歳で出て当然ということももっと知られていくといいなと思います。
咀嚼して飲み込む、ことまでは重要ではなくて、一口でも食べる、を積み重ねていけば、後々好き嫌いが減って、結果的に栄養をまんべんなくとれるような体になっていきます。
だけど、将来的に食わず嫌いが続いてしまって、食べられるものが限られていたら、そもそも食事が楽しくないだろうし、海外旅行に行ったときに現地のものが何も食べられなかった!なんて結果になると少しさみしいですよね。そういう状況を避けるために、幼児期に食に対するポジティブな記憶や豊かな経験を育むことを大事にしていけたらいいなと思います。
私が取り組んでいるのは、何品目も摂取して、という栄養面の食育とはまた切り口が違います。
栄養バランスが、とかおかずは何品作って、ってことばかり考えていると苦しくなるし、外食でそこをフォローするのは難しいですよね。