「老後2000万円問題」が提起され、話題となったのは7年前(2019年)でした。ここ7年の間に日本では大きくインフレが進み、老後資金の必要額もより大きくなっているはずです。
実際に必要な老後資金をシミュレーションしてみましょう。
「老後2000万円問題」は、インフレによって過去のものに?
2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書が公表されてから、7年が経過しました。
当時、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では、受給する年金額から生活費を差し引いた毎月の不足額が約5万円となり、それが30年続くと、約2000万円の老後資金が必要になる」という試算が大きく報じられ、「老後2000万円問題」として日本中に波紋を広げたことは、記憶に新しいでしょう。
この「2000万円」という数字は、あくまで当時の総務省「家計調査」の平均値に基づく一つのモデルケースに過ぎませんでした。
しかし、分かりやすい数字であったために独り歩きし、多くの方に「老後はとりあえず2000万円貯めれば大丈夫なのだ」という一種の目安、あるいは安心材料として定着してしまった側面があります。
しかし、日本においてはこの7年間で劇的にインフレが進み、状況が大きく変化しました。ウクライナ戦争・イラン戦争などの影響による世界的なエネルギー価格や食糧価格の高騰、円安の進行、人手不足による人件費高騰などにより、あらゆるモノやサービスの値段が上がり続けています。
買い物をした際のレシートや毎月の電気代・ガス代の請求書を見て、「数年前より確実にお金がかかるようになった」と実感している方は多いはずです。
では、このインフレは老後資金にどのような影響を与えるのでしょうか。
仮に、2019年当時のモデルケースであった「毎月約5.5万円の赤字」が、物価上昇の影響によって生活費が2.5万円増加し、「毎月8万円の赤字」になったと仮定してみましょう。
8万円の赤字が30年間続いた場合、必要な取り崩し額は以下のようになります。
8万円×12ヶ月×30年=2880万円
このように、生活費のベースが少し上がるだけで、必要な老後資金は2000万円から3000万円、あるいはそれ以上へと跳ね上がります。
さらに、医療の進歩により「人生100年時代」が現実味を帯びる中、長生きすればするほど必要な生活費の総額は大きくなります。
このような理由から、「老後2000万円問題」というフレーズは、すでに過去のものとなりつつあります。
現在の物価水準とこれからのインフレリスクを考慮すれば、かつての基準に縛られたままの状態でいることは、非常に危険だと言えます。



















