小学校入学前に、子どもに数字やひらがななどの知識を先走って与えてしまうと、入学後、授業中に「知ってる!知ってる!もう幼稚園で習った!」と自慢げに騒ぎ、担任から「やりにくい子だなあ」と疎まれたり、本人が既に知っているので退屈してしまわないかと心配になりませんか?
かといって、周りの子が自分の名前を書けて、幼児の頃からお手紙交換までしているのに自分の子だけそれが出来ないと、入学直後から自信を失くし、落ちこぼれてしまうのではないか…つまずいてしまうのではないか…とも思い、不安になってしまいますよね。
一体どうしたら良いのでしょうか?『「はずれ先生」にあたったとき読む本』の著者の立石美津子がお話しします。
知らない外国語で授業をされたら?
例としては極端かもしれませんが、もし、自分がチンプンカンプンのドイツの歴史の授業をドイツ語で受けなくてはならなかったらどうでしょうか。
きっと45分間座っていることは苦痛以外の何物でもないと思います。睡魔との戦いにもなります。そして「早く終わらないかな」と思い、頭の中で空想の世界に浸って、授業内容には耳を貸さないかもしれません。
反対に、よくわかる言葉で知っていることを話されたら、興味津々になるのではないでしょうか。
実は“知り過ぎていて眠くなったり、授業に飽きてしまう”ことはあまりありません。むしろその反対で、わからないから集中出来なくなることは大いにあります。
子どもは大人より“繰り返し”が好き
子どもは大人より反復を好みます。例えば絵本。大人は一度読み終えた本はテストがあるので勉強しなくてはならない等、よほどの理由がない限り何度も読み返すことはありませんよね。
けれども、子どもは毎日毎日、飽きもせず同じ絵本を「これ読んで!」リクエストしてきます。そして、一言一句暗記していて、親が読み間違えると「違う!ちゃんと読んで!」と指摘してきます。そして、同じ場所で笑います。
また、絵本の文章も繰り返しが多く使われています。
桃太郎
例えば「桃太郎」。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬を連れて鬼が島へと向かいました……。
こんな文章が、犬、猿、キジと3回続きます。
私は幼稚園で仕事をしていたのですが、子どもたちから何度もリクエストされるため、読み聞かせがおっくうになりました。そこで、こんな風に読んでみました。
同じ個所はカットして、「キジはさっきの犬や猿と同じことを言いました……」
子どもたちは不満たらたらで、「ちゃんと読んで!」と怒り出しました。
つまり!知っていることが小学校の授業で繰り返されたとしても「もう知っているから、つまらない」とはならない訳です。
つまらないのは内容の繰り返しが原因ではなく、担任の指導力が原因のことがあります。
小学校では幼稚園や保育園時代のように先生が手遊びしたり歌ったりしてはくれません。抑揚やメリハリのない喋り方をする先生の場合、退屈してしまうかもしれません。
苦手は避けたい
以前、小学校低学年の児童を指導していた時期がありましたが、小学生で算数の授業を一番、熱心に聞いているのは算数が得意な子、国語の授業を一番熱心に聞いているのは国語が得意な子でした。
苦手意識を持っている子はあくびをしたり、他のことを考えていたりして集中できていませんでした。宿題も苦手意識がある子はやりたがらず、得意な子はどんどんやってきて学力差が開いていく一方で、ジレンマを抱えていました。
“好きこそ物の上手なれ”で、“知っているからまた聞きたい”“得意だから興味を持つ”のが人間だからです。