プリンセスなのに歌えないアリエル
アースラとの取引で、声を失ってしまうアリエル。
ミュージカル映画なのに主人公が歌えません。アリエルは歌えないプリンセスになってしまいます。
声で表現できず、歩くことすら不慣れなアリエル、それでも夢に向かって突き進んでいきます。
ディズニー・プリンセスは様々な困難に立ち向かい、その境遇は時代を経るごとにプリンセスらしくないものになってきています。
しかし、歌を失ってしまうほどディズニー・プリンセスにとって難しいことはないでしょう。
それでもアリエルの強い気持ちを表す曲「パート・オブ・ユア・ワールド」は作品の随所で使われています。
歌えない彼女の代わりに、陸の世界への夢見る気持ちの象徴として「パート・オブ・ユア・ワールド」が登場します。
言葉や歌詞のある歌だけでなく、音楽でも陸と海の世界の繋がりが描かれていく、まさに映画だから成せる表現です。
新しい時代を切り開いたプリンセス
『リトル・マーメイド』はディズニーの王道ラブストーリーです。
しかし、ディズニーの歴史的には、『リトル・マーメイド』が公開されたのは、十年以上ヒット作に恵まれず、プリンセスも作れなかった時代でした。
1990年代の「第二黄金期」と呼ばれる大ヒット作品群の1作目となった、転換点としての作品でもあります。
自由を失ってでも自らの「足」で愛を掴もうとしたアリエルは、ディズニー・プリンセスの新しい時代を切り開きました。
父娘のストーリーでもある
そして、その愛はアリエルとエリックのものだけではありません。
映画の最後に描かれているのは、エリックとの愛よりもむしろ父であるトリトン王との愛です。
作品中最後のセリフは、アリエルの「愛してるわ、パパ」。
違う世界へと別れる父と娘の物語でもあります。
その存在で周りを動かしていくとしての美しい心、様々な形での「真実の愛」など、公開から25年以上たった今でも変わらない、ディズニー・プリンセスとして大切なことが『リトル・マーメイド』には詰まっています。