平田オリザさんとの出会い、そしてキャストを選ぶ時のポイントとは?

――ところで、本広さんは一時映画監督を辞めようと思ったことがあったと伺いましたが…。

本広:やめようと思ったわけではないんですが、僕は先輩たちに譲ってもらったおかげで監督ができるようになったので、僕もこの辺で後輩たちに道を譲ったほうがいいんじゃないかと思ったんです。ただ、オリザさんの『幕が上がる』が映画化できるならうれしいし、今までの恩返しになり、オリザさんが代表を務める劇団、青年団を維持する手助けにもなるんじゃないかと考えたわけです。

――オリザさんと出会ったのはいつごろですか?

本広:2007年です。オリザさんの演出助手の方とお芝居を3本作って。それがきっかけで、『ソウル市民』というお芝居を見てすっかりハマりました。
それ以降は、映画を撮る時、キャストに無名だけど面白い人をピックアップするようになりましたね。

――今、活躍している俳優さんの中には、本広さんの作品をきっかけにさまざまな作品で引っ張りだこの方ももいらっしゃいます。ムロツヨシさん『サマータイムマシン・ブルース』)や真木よう子さん(『SP』)、また『幕が上がる』にも出ていた吉岡里帆さん(映画『明烏』ヒロイン役)、芳根京子さん(ドラマ『表参道高校合唱部!』主演)も活躍中です。

本広:それは本当にうれしいことですよね。

――キャストを選ぶうえで「ここだけはチェックする」というところはあるんですか?

本広:僕は大体直感で選んでいるんですが、目標を持って夢を追いかけられているか、ということは見ています。あとはマネージャーですね。マネージャーは他人の人生を握っているわけですから、彼らに対しては厳しいですよ。
それでも、いい役が決まると真っ先に報告しに来てくれるので、そういうときにはお祝いの言葉をかけています。

――では最後に、今回の『転校生』について、見に来る方、まだ迷っている方に一言お願いできますか?

本広:この作品は演劇を見慣れない人にも楽しめるように創っています。物語を追うだけが演劇ではなく、それぞれの場面が観察できるようになっているので、そこから何か感じてほしいですね。そして、ぜひ21人の女優達も観察してほしいと思います。

それから、今回はとてもいい環境の中で作らせてもらいました。こういうことが毎年できて、スターを輩出できれば、これほどいいシステムはありません。
21人の出演者たちは、映像作品にもすぐ対応できるほどたたき上げられていますので、ぜひ楽しみに見に来てほしいです。

――本当に皆さんステキな女優さんたちですよね。本番を楽しみにしています。