家電には取扱説明書があります。書かれている通りに使用すれば正常に動きます。
けれども、子育ては生身の人間を相手にすること。遺伝的要素も家庭環境も異なるので「こうすれば○○に育つ」「これが正解」というものは残念ながらないのかもしれません。
『一人でできる子になるテキトー母さん流 子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話しします。
家電が正常に動かなければ、お客様はお店やメーカーにクレームを言います。
でも、園や幼児教室の先生から「こういう対応をしてみてはどうでしょうか」と言われ、うまくいかなくても、親は先生を責めることなく自分のせいだと思います。
このように、子育てとは「こうやればこうなる」という正解が見えません。
褒めて育てる?叱って育てる?
筆者は保育園・幼稚園の保護者会に呼ばれて講演をすることが多いのですが、参加している保護者から次のような質問を受けることがあります。
「子どもは褒めて育てた方がよいのでしょうか?叱って育てた方がよいのでしょうか?」
そこで次のように答えます。
「子どもが良い行動をすれば褒めて、悪い行動をすれば叱ればいいんです」
何が何でも褒めなくてはならないと思い、必要なしつけをしなければ、子どもはやりたい放題、野獣のようになってしまいます。
「怒る」と「叱る」の使い分けは難しい
子どものしつけについて「叱る」と「怒る」の違いを分析している専門家もいますが、実は、子どもにとっては“叱る”も“怒る”も“注意される”も、やられていることは同じこと。
この違いをあれこれ頭で分析してしつけるのは、親にとってはハードルが高いことだと感じています。
表面を真似してもうまくはいかない
巷にあふれる子育てノウハウ本。例えば“東大脳が育つ●●”という書籍を読んでその通りに実践して、みんながみんな同様に育てば誰も苦労はしませんよね。
人は持って生まれた遺伝的要素も育つ家庭環境も異なります。
「東大に合格した子どもの家庭にはテレビがなかった」と聞いて、真似をしてテレビを処分したとしても、「ねえ、ママどうして○○なの」という子どもからの質問を無視して親がずっとスマホに釘付けだったら、子どもの知的好奇心は満たされることはないでしょう。
「東大生は子ども部屋を与えられず親の目の届くキッチンで学習していた」と聞いて食卓で勉強させても、そこでテレビやパソコンがつけっぱなしでは、かえって気が散り集中できません。
また、親の目のつくところで学習させることで、「ほら間違ってる!」「ちゃんとしなさい!」と小言やダメ出しが多ければ学習意欲がなくなってしまいます。