選んだなかでもっとも感動したのが、「クローバーの塩バターパン」(198円)だった。

バターは、都内でも人気が高い「よつ葉バター」。クロワッサン的な食感だった。もちろんパイ生地ではないが、表面がサクサクで、中がモチモチ。

バターをどのぐらい使うとこの食感に焼き上がるのか。素人なのでまったくわからないが、噛めば噛むほど、バターの風味を感じつつ、軽くトッピングした岩塩が舌に心地よい。このパンも熱々で食べてみたかった。買って帰らなかったことを痛烈に反省中。大失敗。

「国産小麦」を選ぶ、その理由は?

近年、国産小麦を愛用するパン職人が増えている。なぜ国産小麦なのか、ご存知だろうか。単に「外国産よりも国産」というステレオタイプではないようだ。

パン職人が国産小麦を使いたがる背景には、ポストハーベストの問題がある。

収穫後、農作物に虫除けの農薬を使う。それがポストハーベストだ。その危険性を避けたいがゆえに、国産小麦を選ぶパン職人が増えているというのだ。

日本国内では、基本的にポストハーベストの使用が禁止されている。だからこそ、十勝産小麦100%を謳うこの店は、貴重な存在だといえる。

美味しいだけでなく、安心安全なパンを焼きたいし、提供したいという思いが強い。都内でも有名なパン職人が、国産小麦を選ぶのはそのためだ。

帯広にはなかなか行けないけど、国立なら。改札口を出たら、眼の前に、十勝の雄大な小麦畑が広がっている……。そんなパン屋だ。店の背景にある、十勝の自然を舌で体感するには、何度も通うしかないようだ。

【十勝ファーマーズベーカリー ムギオト】
住所/東京都国立市北1-14-11 nonowa国立EAST
電042-505-4868
営業/7時〜21時 ※日曜も営業
価格はすべて税込

【PAPERWALL CAFE】
住所/東京都国立市北1-14-11 nonowa国立EAST
電042-843-0361
営業/7時〜21時
※ムギオトで購入したパンを持ち込めるのは、朝7時から9時45分まで限定。
別途300円(税込)でコーヒーや紅茶、カフェオレ、ウーロン茶、ジュースなどを購入。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。