『コウノドリ』、新作、クラシック。3つの柱を持つコンサート

清塚信也さん

──そうした清塚さんの想いが詰まった「BABY」の曲が聴けるということで、とても楽しみにしておられる方達も多いコンサートですが、全体の構成はどのように?
 

『コウノドリ』に関してはやはり特別なひとつの柱としてあるのですが、他に「あなたのためのサウンドトラック」という新しいアルバムで出した一面を見せていきたいことがひとつ。あとはクラシックをより身近に感じて頂きつつ、本格的なクラシックを聞いて頂くという、3本柱で行こうかなと思っています。

僕はサウンドトラックの分野に近年関わらせて頂いていて、これは作曲家としての一面ですが、僕の仕事の中で初めての裏方なんです。

これまでずっと、自分の名前で、自分の顔で看板を出して売っていかなければならないという世界にいましたが、初めて必ずしも自分が主役ではなく作品が主役、ドラマにしても映画にしても、その作品を立たせる、サポートする為に音楽があるという世界に入りました。

そういう意味で初めての裏方の仕事で、そこから学んだのは、ピアノも含めて歌詞のない楽器演奏だけのもの、インストゥルメンタルの音楽ができることは何か。僕がこれまでずっと考え続けてきたことのひとつの答えだったんです。

クラシックの演奏や、自作曲を披露するという時には、自分が主役になってお客様を巻き込む、「よし、ついて来い!」という方向なのですが、サウンドトラックというのは音楽が作品についていって、お客様をサポートしなければならないんですね。主役の座を明け渡して感性をサポートする。そういう音楽に対して、自分がとても得意だなと感じたんです。

歌詞がありませんから意味を断定しませんし、最後まで抽象的な「音」でいられる。聴く人それぞれにフィットして、例えば2000人が聞いてくれたなら正解が2000通りある。これが楽器音楽ののある意味で最大の強みではないかと。
 

──その思いが「あなたのためのサウンドトラック」というタイトルに?
 

そうです。聴いてくださる方々の生きている時間が主役で、それがドラマであると。サウンドトラックは業界用語で言えば「劇伴」と言うんです。

劇の伴奏なので、僕の音楽が流れたからといってそれに聴き入らなくてもいい。むしろその時々、悲しかったり、楽しかったり、その人その人に感情があり、人生がある。その時間を大切にして、自分の人生においてすべての人が主役だということを感じて欲しいんです。

そうした人生のサポート役としての音楽の中に、ピアノにしかできない良さがあると、僕はサウンドトラックに取り組むことで気づいたので、今回はコンサートの中でもそれをやりたいなと。

クラシックを弾いている時には、あくまでもクラシックという伝統ある、価値あるものが主役になりますから、疲れるくらい集中して聴き入って欲しいのですが、サウンドトラックを弾いている時には、その主役の座を交代して、それぞれの人生を飾ってあげるという気持ちなので、リラックスして心を遊ばせて頂ければ。

コンサートの中でそれをやるのは、ある種不思議な空間になるかも知れませんが(笑)。そして『コウノドリ』の「BABY」はエモーショナルに弾く曲なので、是非「BABY」のファンとしてノッて聴いて欲しいですね。
 

──とても盛りだくさんな内容になりそうですね。
 

色々なかたちで楽しんで頂けると思います。