生活の中にピアノがある人生のきっかけになりたい
──その頃から、俳優の仕事にも興味が?
ええ。でも幼い頃からピアノの道をひたすら突き進んでいただけに、ひとつの芸事をマスターするのが如何に大変かということはよくわかっていたので、片手間に手を出しても自滅していくだけだというカンは働いていました。
なので、自分の中で最もスキルを上げていたもので、まずピアニストとして成功してから、次にやりたいものに広げて行こう。その準備だけはして行こうと、実は高校生の頃から少しずつはじめてめてはいたんです。僕の人生を、ピアニスト、作曲家、俳優という3つで構成したいというビジョンは見えていたので。
──その目標通りに、現在の活動が進んでいますね。
目標と言うよりも、ゴールでしょうか。それさえ明確にして、更に努力を怠らなければ、人にできないことはほとんどないと僕は思っています。よほど不幸なアクシデントがない限り、道を絶たれるということはあまりないのではと。
もちろんそこにはゴールをどこに定めるかのセンスは必要で、高校生になってから「ピアニストになりたい!」と言うのは、それはゴールの立て方が悪い。自分のできる範囲をちゃんと知った上で、ゴールに向かって努力し続ければ、誰でも絶対にクリアできると思うので、自分としてはそれほどすごいことをしているとは思っていないです。
──とは言え、やはり特別な才能もお持ちだから、それぞれの道が拓けてもいるのでは?
それはどうかなぁ(笑)。だって俳優に最も大切な才能ってカッコよさですよね?
──ですから、ちゃんとそんなにカッコよく生まれていらして、才能を持って。
ないです、ないです(笑)。俳優のカッコよさってそれこそ特別なもので、正直僕にはそのカッコよさは足りないですよ。それはプロの目として克服しなければならないと思っています。
でも顔も、体形も、筋肉も持って生まれたものは克服できないじゃないですか。もっと背の高い人とは勝負できないから、不可能なところで戦うのではなくて、如何に補うか。むしろコンプレックスを持っているからこそ、じゃあここでは負けないぞ!と思ってやった時に、人は大きな力が出ます。
偉人と呼ばれる人も皆コンプレックスから始まっていますので、そこは虎視眈々とね(笑)。評価してもらえるように努力を積み重ねているので、全然才能じゃないです。
──そういう努力の大切さは、今「ピアノアカデミー」などの活動もされている中で伝えていきたいことですか?
特に若い人に伝えたいです。大人にはそれぞれの人生がありますから、スタイルを強いることはしたくないのですが、子供さん、特に小学校、中学校の方達には、どんなにおこがましくても言っていきたいですね。やっぱりゴールデンエイジなんですよ。あの時期にしか得られないものがありますから、機会を失して欲しくないです。
僕はコンクールで努力を強制されたけれども、でもその努力から得たものが今最高に使えているので、それが僕にとってコンクールからもらったいちばん大きな力かな。あのコンクールがなかったら、あとは母が怖くなかったら(笑)、絶対にあれほどの努力はできなかったのですごく感謝していますね。
──では、虚しさを感じた時期もあるとのことでしたがが、今はその過程がご自身の基礎に?
そうですね。僕のすべての基本になっていると思うし、あの時期がなかったら今の僕のはないですね。青春のすべてを捧げて特訓した甲斐はありました。
──そうした経験を踏まえて、このコンサートもそうですが、今後清塚さんの音楽を通して伝えていきたいことは何ですか?
あまり哲学的なことを言うつもりはないですが、皆さんの生活の中に楽器の音楽を取り入れて欲しいと僕はずっと思っていて。例えば5分間時間が空いた時に、ちょっとピアノを流してみようかな?と思って欲しい。そういう形でピアノの音楽、楽器の音楽に接している方が、まだ日本では非常に少なくて。
聴いてみて「合わないな」と弾かれるなら本望ですし、批判されるのはむしろ嬉しいです。それは評価してもらえたということですから。でもこの5分間で何をしようと思った時に「ピアノを聴いてみよう」という選択肢すらないのは、とても悲しいことなので、「あ、時にはピアノもいいかもな?」というきっかけに、このコンサートをはじめ僕の活動がなってくれたら、こんなに嬉しいことはないと思っています。
──新しいアルバムの趣旨が「人生のサウンドトラックでありたい」だと伺っていますが、そういうことでしょうか?
まさにそういうことですね。「いつでもそばにいるよ」というとクサいのですが(笑)、でもそうありたいと思っています。
──ではコンサートを楽しみにされている方々にメッセージを。
トークもありますので、コンサートの時間内、僕がきちんとガイドしながら進めていきますから、ずっと応援してくださっている方、『コウノドリ』で初めて関心を持ってくださった方、どなたでも何の準備もなくふらっと来て頂ければと思っています。是非足をお運びください。お待ちしています。
プロフィール◎清塚信也
5歳よりクラシックピアノの英才教育を受け、中村紘子氏、加藤伸佳氏、セル ゲイ・ドレンスキー氏に師事。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後、モスクワ音楽院に留学。1996年第50回全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部第1位。2000年第1回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 第1位、2004年第1回イタリアピアノコンコルソ金賞、2005年日本ショパン協会主催ショパンピアノコンクール第1位など、国内外のコンクールで数々の賞を受賞。
ソロ公演、オーケストストラとの協演をはじめ、年間100本以上の演奏活動を展開する一方、ドラマ「のだめカンタービレ」にて「千秋真一」、映画「神童」では「ワオ」の吹き替え演奏を担当。2013年には映画『さよならドビュッシー』で岬洋介役として俳優デビューを果たす。
また、2015年4月、インターネット配信のピアノスクール『清塚信也ピアノアカデミー』を開講。現在公開中の映画『ポプラの秋』(主演:本田望結)では出演のほかに音楽(作曲&演奏)を、2015年10月から放送のTBS系 金曜ドラマ『コウノドリ』(主演:綾野剛)ではピアノテーマおよび監修を手掛けるなど、マルチピアニストとして年々活躍の幅を広げている。2015年11月、ニューアルバム「あなたのためのサウンドトラック」発売。
【公演情報】
「K'Z PIANO SHOW 2015」〈Newアルバム発売記念〉清塚信也ピアノリサイタル
当日引換券発売!
〈日時〉2015年11月14日(土)開場・13時/開演13時半
〈開場〉第一生命ホール 都営大江戸線「勝どき駅」A2a出口 徒歩8分
〈料金〉全席指定 5,400円(税込)未就学児童入場不可
●チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード272-388)
ぴあ店舗、セブンイレブン、サークルKサンクス店内端末(直接購入可能)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11時~17時)