長男のアレルギーをきっかけに料理を始め、オーガニック食品による無添加手作りを実践している料理家の宮川順子さん。著書『料理嫌いだった私が「365日×15年」毎日台所に立ち続けた理由』から、“いい食材と調味料”の重要性についてのお話と、おすすめの調味料をご紹介します。
いい食材と調味料が料理をラクにする
私が料理家として、そして味覚教育に携わる者として、どうしてもみなさんにお伝えしておきたいことの一つが、「シンプルな味付けで食べよう」ということなんです。
畑に行って、採れたてのきゅうりをかじれば、なんの味をつけなくても、そのままでおいしいということは、みなさんも想像がつくと思います。
その味をさらに引き立てるために、塩をつけるとか、ちょっと酢や油を足してあげる。味付けは、あくまでも食材がおいしくなるためにやることであって、極力シンプルな味付けで、食材そのものの味を食べるというのが、究極のおいしい料理だと思うのです。
私は、「料理は買い物から始まる」ということをよく言っています。そのまま食べてもおいしい食材をまずは選んでくる。そして食材を買ってきたら、それがよりおいしくなるための簡単な味付けをする。そうした料理の大前提を理解したあとに、いろいろな料理のテクニックがついてくるわけです。
「もっとお金があれば、いい食材をそろえられるけど……」とおっしゃる方が多いけど、そうじゃないんですよ。多少値段は上がるかもしれませんが、いい食材さえあれば、料理にはそんなにお金は掛からないんです。
だって、どのご家庭の冷蔵庫にも、なんだかよくわからない○△□ソースだとか、何たらドレッシングだとか、5~6本入ってたりするでしょう? ああいうのを揃えるほうがお金がもったいないですよ。もともと味のない食材を使うから、あれこれといろいろな調味料が必要になって、結果的によくわからない味になってしまいます。
本当においしい食材だったらちょっと塩をふるだけでよかったりするので、調味料を何種類もそろえなくたっていいんですよ。
ただし、塩、醤油、みりんなどの基本的な調味料だけはしっかりとしたいいものをそろえておく。いい醤油であれば1滴2滴たらすだけで、嬉しくなってしまうくらいのマイルドな味がふわっと広がりますよ。あれこれと、いろいろな調味料を使わなくても、少量で脳は満足する。そういうふうにできているのです。
おいしい料理を作りたいと思ったら、まずはおいしい食材を買いましょう。そのためには食材の目利きが大事。別に高いものを買わなければいけないというわけではありません。
近くのスーパーでいいですから、お肉だったらドリップが出ていないとか、トマトだったら大き過ぎない、小さ過ぎない、キャベツだったらちゃんと芯が真んなかにあるとか、そうしたことの見極めが大事なんですね。
料理のおいしさは食材で決まる。そういうものなのです。